『黄帝内経』筆記 病因病機学説(四)

素問・生気通天論篇第三④

【原文】陽気者、煩労則張、精絶、辟積於夏、使人煎厥①。目盲不可以視、耳閉不可以聴、潰潰乎若壞都、汨汨乎不可止②。陽気者、大怒則形気絶、而血菀於上、使人薄厥③。有傷於筋、縱、其若不容。汗出偏沮、使人偏枯。汗出見湿、乃生痤疿(ざひ)④。高梁之変、足生大丁、受如持虚⑤。労汗当風、寒薄爲皶(赤鼻)、鬱乃痤⑥。

【注釈】①陽気者、煩労則張、精絶、辟積於夏、使人煎厥:人体が煩労過度の時に、陽気は亢盛して精気を耗竭させる。繰り返すと陽気が段々亢盛し陰精が段々虧損され、夏の暑熱の季節に入ると「煎厥(せんけつ)」が発生し易い。「煩労」とは「繁労」である。「辟積」とは重なることである。「煎厥」とは古代の病証名で、陽気が亢盛して陰精を消耗することによって気逆昏厥が起こる病証である。

②目盲不可以視、耳閉不可以聴、潰潰乎若壞都、汨汨乎不可止:(発作の時)目が朦朧してものを見えなくなる、耳が閉塞して聞こえなくなる、その混乱に状態は都が崩壊され、水が激しい勢いで流れるよう、収拾がつかない。

③陽気者、大怒則形気絶、而血菀(えん)於上、使人薄厥:人体の陽気は、激怒する時に臓腑経絡の気が通じなくなるが、血液は陽気に従って上昇し身体の上部に集まり、他の部位と分離して「薄厥(はくけつ)」が発生する。「形気」とは、臓腑経絡のその気を指す。「絶」とは止まる、通じないことである。『素問釈義』に「形気絶の者は、営衛が不通で形態が死んでいるようである」と説明している。「薄厥」とは古代の病証名で、激怒することによって気血が心胸部或は頭部に上逆して昏厥が起こる病証である。「薄」は「迫」の意味である。

④有傷於筋、縱、其若不容。汗出偏沮(へんそ)、使人偏枯(へんこ)。汗出見湿、乃生痤疿(ざひ):もし諸筋が損傷されたら、筋が弛緩して自主運動ができなくなる。よく半身に汗が出ると、半身不随になることもある。なお、汗が出るときに湿邪に遭うと、小さな瘡癤(そうせつ)と汗疹が出る。「容」とは「用」の意味で「不容」とは肢体が自主運動できないということである。

⑤高梁之変、足生大丁、受如持虚:よく脂や精米など厚味のものを食べると、疔瘡などが発生し易くなり、空いている容器で物を受けるように、病気が罹りやすくなる。「高梁」の「高」は「膏」の意味で脂肪類の食物を指し、「梁」は「粱」で精細な食糧を指す。足生大丁の「足」について、幾つの解釈があるが、『素問校義』では、「是」の誤りで「則」の意味であると説明している。「丁」は「疔(ちょう)」のことで毒瘡である。

⑥労汗当風、寒薄爲皶(赤鼻)、鬱乃痤:もし労働で汗が出ているときに風寒の邪気に遭うと皮膚腠理に溜まり、赤鼻になって鬱積し化熱して瘡癤になる。

【説明】前回の文に続いて、内傷と外感による気血失常の一部の病証を挙げ、人体の陽気が外感病の発病に主導的な作用があるだけではなく、内傷病の発病にも同様に重要な作用がある。陽気失常は陰陽失調であるから、多様な病理変化が現れる。これは臨床上、疾病へ対する認識や、病機の分析などに実践的な意義がある。
煎厥について、『内経』に二ヶ所記載してあるが、意味が異なる。なお、煎厥と薄厥について、前者の病因病機は煩労(労傷)による陽亢傷陰、陰竭陽浮で虚証である。後者の病因病機は激怒(情志)による激怒傷肝、気血上逆で実証である。両者共通の症状は(酷い場合)昏厥するであるが、前者に「目盲不可以視、耳閉不可以聴」などがあり、後者は「傷筋則縱、汗出偏沮、久則偏枯」。


(李)
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by jbucm | 2015-06-18 10:30 | 中医学 | Comments(0)

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