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気血津液と臓腑の話(66)


今回は、臓腑兼証の最後の二証を紹介致します。

⑪肝腎陰虚証:肝腎陰液虧少、虚火内擾による虚熱証候です。多くは長い病が回復できず、或は不節制な性生活で腎の陰精損傷により、肝陰血の虧虚を招くか、情志内傷、肝陽亢進、長期間陰を消耗することにより、肝陰が不足して腎陰にも及ぼし、肝腎陰虚となります。また、温熱病が長引き、肝腎の陰液が奪われて招致されることもあります。

【臨床表現】:めまい、眩み、耳鳴健忘、不眠多夢、口燥咽乾、脇痛、腰膝酸軟、五心煩熱、頬紅盗汗、遺精、月経量少、舌紅少苔、脈細数です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、脇痛、腰膝酸軟、耳鳴、遺精(女子の場合は月経量少)に陰虚内熱の症状が伴うことです。

肝腎同源、肝陰と腎陰は互いに滋長し、「盛則同盛、衰則同衰」との言い方があります。病理上では、腎陰不足だと水不涵木、従って肝陰も虧を招き、肝陰不足も腎の及ぼし、腎陰虚を招きます。陰虚だと陽亢するので、肝腎陰虚証は陰液虧少、虚陽偏亢を病変の特長となります。

陰液が虧虚で、頭目に上栄しないので、めまい、耳鳴、健忘となり、虚陽偏亢、虚火内擾なので、不眠、五心煩熱、頬紅盗汗を見ます。肝が滋養を失うので、隠々とする脇痛を見ます。腎陰虧少なので、腰や膝がだるくなります。虚火が精室を擾動するので、夢精を見、女子の場合は、陰が虧して衝任脈とも空虚なので月経量が少ない。舌脈はみんな陰虚内熱の表しです。


⑫肝火犯肺証:肝経の気火が上逆して肺を犯し、肺の清粛機能を失わせて起こる証候で、五行理論に基づき木火刑金とも呼ばれます。多くは情志鬱結或いは邪熱が肝経に蘊結し鬱して化火、肺に上犯して起こるものです。

【臨床表現】:胸脇灼痛、いらいらして怒りやすい、めまい目赤、煩熱口苦、ひとしきりひとしきりの咳嗽、痰は少ないが、黄色く粘々する、酷い場合は咳血。舌紅で苔薄黄、脈は弦数です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、胸脇灼痛、いらいらして怒りやすい、目赤口苦、咳嗽がすることです。

肝の性質は昇発、肺は粛降を司る。二者の昇降がつり合えば、気機が調達します。肝気が鬱して化火し、昇発過多で上逆して肺を犯し、肺の粛降機能を失わせて、「木火刑金」の肝火犯肺証になります。

 肝経火鬱なので、脇肋灼痛となります。鬱火内積し、肝の条達柔和の性質を失うので、いらいら怒りやすくなります。肝火が上炎し、肺金を焦灼すれば、肺は清粛を失うので、咳嗽陣作、胸部に灼痛を覚えます。火邪内灼し、咳が肺絡を損傷すれば、咳血を見ます。肝火が炎上するので、煩熱口苦や、めまい目赤などの症状も見ます。舌脈は肝経に実火内盛の表しです。


 2007年10月から、約20ヶ月にわたって、気血津液と臓腑の話しを致しました。全66回でした。長かったですが、これで気血津液と臓腑の生理及び病理(弁証)についてお分りいただければ、嬉しいです。

今回を持って、気血津液と臓腑の話しを終了させて頂きます(実は、中国語の六(liu)は「順」という意味で、「66」はとても良い数字です)。長い間、ご愛読頂き、ありがとうございました。皆さんの健康、仕事と勉強などが全て「順」になりますように心より願っております。

次回からの内容は、お楽しみにして下さい。


(李)
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by jbucm | 2009-07-02 09:56 | 中医学 | Comments(0)

気血津液と臓腑の話(65)


⑨肝脾不調証:肝失疏泄、脾失健運により脇痛、腹脹、腹泄等を表す証候です。肝鬱脾虚、肝気犯脾(肝木乗土)とも言います。多くは情志不遂、鬱怒傷肝により、肝失条達して脾土に乗する、或は飲食労倦等により、脾気を損傷し、脾不健運となって肝の疏泄に影響し、脾虚肝鬱、肝脾失調を招きます。

【臨床表現】:脇肋と腹部に脹悶、お腹のあちこちに走り回る痛み、ため息、情志抑鬱、不快かいらいら、食欲がない、腸鳴矢気(ガスが出ること)、大便溏ですっきり出ない、或は腹痛欲泄、泄後痛減、舌苔白、脈が弦です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、脇と腹部の脹悶、走り回る腹痛、ため息、情志抑鬱、食欲がない、大便溏などが主症状です。生理上、肝と脾は密接な関係を持ち、肝主疏泄で、胆汁を分泌して消化を助け、また、脾の精微を昇散することを助けます。脾主運化、血を化して肝を養います。肝気滞だと脾の運化に影響するが、これは「木不疏土」と言います。脾失健運か脾虚湿蘊、肝気が阻まれて疏泄を失うのは「土反侮木」と言い、そこから肝脾同病が形成されます。

 肝失疏泄、経気阻滞の故に、脇肋脹悶痛となります。肝は条達を喜び、抑鬱を悪み、肝鬱気滞だと、情志が抑鬱され横逆し、肝失柔和の故に、いらいらとなる。脾失健運の故に食少、腹脹、便溏を見ます。肝鬱気滞、脾気不和の故に腸鳴矢気或いは大便溏結不調、腹痛欲泄などを見ます。肝病が先にあり、病情が情緒を密接に関係しているものの多くは肝気犯脾に属し、脾病が先にあり、食少、便溏を主とするものの多くは肝鬱脾虚に属します。

⑩肝胃不和証:肝気鬱滞、横逆犯胃、胃失和降によって脘脇脹痛を見る証候です。肝気犯胃とも称されます。多くは情志の不快、肝気を鬱滞させ、横逆犯胃して生じます。また、飲食等による傷胃により、胃失和降させ、肝の疏泄に影響して招くこともあります。 
 
【臨床表現】:脇肋、胃脘脹満痛、走り回る腹痛、曖気(げっぷ)、呑酸(酸っぱい水を吐く)、呃逆(しゃっくり)、情緒抑鬱か煩燥怒りっぽい、ため息、納少、舌苔薄黄、脈弦でやや数です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、脇と腹部の脹悶、走り回る腹痛、ため息、情志抑鬱に、曖気、呑酸、呃逆などが伴うことです。

 肝鬱気滞、経気不利の故に脇肋脹痛となります。肝気横逆、気が胃脘に滞るので、胃脘脹痛痞悶を見ます。胃失和降なので呃逆、曖気、曖気を見ます。気が胃脘に鬱して熱を生じるので、呑酸、舌苔は薄黄になります。胃気不健なので納少する。情志抑鬱、ため息、いらいらして怒りやすい、いずれも気鬱不快、肝失条達が原因です。

 今回の両証とも肝と脾胃の証で、同じ症状が多く見られますが、⑨の肝脾不調証は下痢などの腸の症状があって、⑩の肝胃不和証は胃気上逆の症状があります。

(李)
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by jbucm | 2009-06-25 13:30 | 中医学 | Comments(0)

気血津液と臓腑の話(64)


⑦脾腎陽虚証:脾腎の陽気が虧虚して、泄瀉や水腫を表す虚寒証候です。多くは長期の病によって陽気を損傷して発病します。例えば体に水邪が長く留まって、腎陽虚衰を招き、脾土を温養できなくなる。或いは泄瀉が長く、脾陽衰徴して、腎に及ぼし、ついに脾腎の陽気がともに衰えます。

【臨床表現】:顔色こう白、形寒肢冷、腰や膝或いは腹部の冷痛、下痢が止まらない、或は五更泄瀉(夜明けの下痢)、或は完穀不化(不消化の便)、糞質清冷(水様便)、面浮肢腫、或は小便不利、甚だしい場合は腹脹水鼓も見ます。舌質淡胖で苔が白滑、脈が沈細です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、腰膝と下腹部の冷痛、慢性下痢、浮腫みなどの寒象が共に表れることです。

脾は後天の本で、腎は先天の本、脾腎の陽気は互いに助け合って、共同で生体を暖めます。脾は運化を主り、命火(腎火)に頼って水湿の運化や精微の転送などを助けます。腎は水液を主り、脾陽の健運によって、臓腑組織の温養や水液の転輸などを行います。故に脾腎陽虚、その証候は主として陰寒内盛、運化失職、水液停集として表れます。

 脾腎陽虚だと陰寒内盛、陰寒で陽気が阻滞され、生体はその温暖を失うので形寒肢冷、顔色こう白、腹部と腰部の冷痛となります。脾陽不振で、命火の助けを得ないので、運化遅鈍、水穀が腐熟されず、故に下痢清冷、完穀不化、五更泄瀉などを見ます。脾陽虚だと水温を運化できないので、命門火衰して水液を気化できず、水湿が内停して、肌膚に泛溢し、そこから小便不利、肢体浮腫、腹脹水鼓等を見ます。


⑧肺腎陰虚証:肺と腎の陰液不足で、虚陽内擾による虚熱の証候です。多くは燥熱、癆虫(結核)等で肺陰を損傷するか、長期の咳で肺陰が虧損されるか、長期の病が腎に及ぼし、ついに肺陰虚と腎陰虚がともに発生します。或いは過度のセックスで、陰精虧少を招き、陰液が上承せず、虚火が肺を灼き、肺腎陰虚が形成されます。

【臨床表現】:咳嗽痰少、痰の中に血が帯びる、口燥咽乾、声のかすれ、腰膝のだるさ、形体の消痩、骨蒸潮熱、盗汗頬紅。夢精、月経量少など、舌紅少苔、脈が細数です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、長い咳と血痰に夢精、月経量少、腰膝のだるさなど、陰虚証の症状が共に表れることです。

肺は津液を敷布でき、腎の陰精は全身陰液の根本で、肺腎の陰津は互いに滋養するので、「水金相生」といいます。肺腎陰液が虧少すれば、生体がその濡養を失って、燥熱が内生し、肺は清粛を失って気逆、腎陰は斂陽できず火動するが、それが肺腎陰虚の病理的特長です。どちらが先に陰虚が発生しても、最終的に肺腎陰虚証になります。

 陰虚肺燥、津不上承、肺失清潤なので、乾咳少痰、口燥咽乾、声のかすれとなります。虚火内擾、灼傷肺絡なので、痰中に血を帯びます。陰虚で内熱を生じるため、筋肉や骨が充養を失い、形体の消痩、骨蒸潮熱、頬紅盗汗など陰虚火旺の症状を見ます。陰精不足、虚火内擾のため、夢精、月経量少を見ます。腰膝のだるさは腎虚の症状です。

2つの証とも腎の兼証ですが、⑦は陽虚内寒の証で、②は陰虚火旺の証です。

(李)
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by jbucm | 2009-06-18 13:29 | 中医学 | Comments(0)

気血津液と臓腑の話(63)


⑤脾肺気虚証:脾肺気虚により、食少便溏、気短喘咳として現れる虚弱証候です。多くは長期の咳による傷肺、「子病及母」により脾気虚を招くか、飲食の不節制、脾気の損傷により、精微を肺に輸送されないために起こるものです。

【臨床表現】:長期の咳、気短気喘、痰が薄くて白い、食欲不振、腹脹便溏、倦怠乏力、顔色こう(白へんに光)白、酷い場合は面浮肢腫。舌淡苔白、脈は細弱です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、咳喘、納少、腹脹便溏と気虚証が共に発生することです。
脾は生気の源で、肺は一身の気を主る臓です。脾虚で失運し、精気が肺に上輸されないので、肺は虚損し、このため「土不生金」となります。一方、肺気が宣降を失うので、脾の運化に影響し、脾気虚を招きます。なお、水穀運化機能減退として、或いは脾失健運、痰湿中阻、肺失宣降、水津不布として表現されることも見られます。

 肺虚で息が不足するので、気短気喘を見ます。脾虚で運化が鈍るので、食少、腹脹、便溏となります。脾不運湿、気不行水だと水湿泛濫するので、面浮足腫を見ます。湿がたまると、肺にとどまって、肺は粛降を失うので咳喘して薄くて白い痰が出ます。

⑥心肝血虚証:心と肝の血虧により生体がその充養を失ったことで現れる証候です。多くは思慮労神による陰血の消耗、失血過多、脾虚生血の源不足等で心肝血虚を招きます。

【臨床表現】:心悸健忘、不眠多夢、めまい、目のくらみ、両目乾渋、視界模糊、肢体のしびれ、振顫(震える)痙攣(けいれん)、月経量は少なく色淡、或は無月経、顔色白くて艶がない、爪にも艶がない、舌質淡で白、脈が細です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、心と肝の症状に血虚証が伴うことです。心は血を主り、肝血を蔵すので、血虚の多くは心肝両臓に属し、心血が虧損されると肝血も不足し、肝血が少ないと心血も充満できないので、両方とも心肝血虚が形成されます。

 血が心を養わないので心悸します。血が神を養わないので健忘、多夢。血が目を濡養しないので目のくらみ、視界模糊となります。血が筋脈肌膚を濡養しないので、肢体のしびれ、振顫痙攣を招きます。血少で血海空虚のため、月経量が少ないか無月経。血が上栄しないため、めまい、顔面白く艶がなく、舌質淡で白。血が脈に充満しないため脈細を見ます。

今回の2つの証は、⑤は良くみられる気虚の証で、⑥は血虚の証です。

(李)
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by jbucm | 2009-06-11 16:45 | 中医学 | Comments(0)

気血津液と臓腑の話(62)


③心脾両虚証:心血不足と脾気虚弱により表れる証候です。多くは長期の病による体虚、或は慢性出血、或は過度な思慮か過労により心血と脾気が虚弱しているものです。

【臨床表現】:心悸怔忡(せいちゅう、動悸のこと)、不眠多夢、めまい、健忘、面色萎黄、食欲不振、腹脹便溏、倦怠乏力、或は皮下出血、月経量少で色淡、淋漓不尽(だらだらして、終わらない)など。舌質淡嫩。脈細弱です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、心悸不眠、顔色の萎黄、疲れ、少食、腹脹便溏と慢性出血です。脾は気血生化の源で、また統血の機能もあります。脾気虚弱すると、生血不足になり、或は統血機能が弱まって、慢性出血を引き起こし、いずれも心血虧虚を招きます。なお、心主血、また血は気の母ですから、心血が不足すると、化気ができず、脾気虚も発生します。なので、脾気虚と心血虚二者は病理上では、よく相互影響し、結果的に心脾両虚になります。

心血不足で心筋を養われないので、心悸怔忡、心神不寧、不眠多夢が現れます。頭も養われないから、めまい、健忘などを見ます。面色萎黄、食欲不振、腹脹便溏、倦怠乏力は脾気虚の症状です。なお、出血の症状も脾虚で摂血できないからです。舌脈は気血不足の候です。

④心肺気虚証:心肺気虚による動悸喘咳の証候です。多くは、長期の病による体虚、長期の咳による傷肺、過度の労働による気の消耗、脾虚生気の源不足等で心肺の気を両方虚弱になります。

【臨床表現】:動悸咳嗽、気短にして気喘、動くとひどくなり、胸悶、薄い痰がでる、声は低い、めまい、神疲乏力、自汗、顔色淡白、舌淡苔白、脈沈細或は結代(不整脈)です。

【証因分析】:本証の弁証要点は、動悸咳嗽と気虚がともに発生することです。肺気虚弱していると、宗気の生成が不足になり、心気虚を招きます。また、先に心気不足であれば、宗気も消耗され、肺気虚を招きます。故に心肺の機能活動はいずれも宗気によって推動され、心気虚弱か肺気虚弱は宗気不足の表れです。心は血を主り、肺は気を主る、気はそれによって血を統率し、血はそれによって気を載せ、いずれも宗気が本となります。従って心、肺の気虚は互いに影響しあいます。咳嗽、気短、気喘、動くとひどくなり、痰がでる、声は低い、自汗などは肺気虚の症状で、動悸、めまい、神疲乏力、顔色淡白、脈沈細か結代などは心気虚の症状です。

では、次回は脾肺気虚証と心肝血虚証を紹介致します。


(李)
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by jbucm | 2009-06-04 09:33 | 中医学 | Comments(1)

気血津液と臓腑の話(61)

   
   臓腑の兼病①と②

①心腎不交証:心と腎の間の陰陽水火の関係が失調した証候で、一般に心腎の陰虚陽亢証を指します。多くは久病で傷陰、或は思慮過多(考え事が多過ぎ)、情志化火により心陽偏亢、或は腎陰の損傷を招くかセックスの不節制、虚労等により、腎陰虧損、虚陽偏亢、心神擾乱、或は外感熱病による心火亢盛を招きます。

【臨床表現】:心煩不眠、驚悸多夢、めまい、健忘、耳鳴、腰膝酸軟、夢精、咽乾、五心煩熱、潮熱盗汗、尿黄、便結、舌紅、苔薄黄で少津、脈は細数。或いは腰と下肢のだるい、冷えを兼見する。

【証因分析】: 本証の弁証要点は不眠に心火亢盛と腎陰虚の症状が伴うことです。
  生理上、心は火臓であり、下行して腎水を温めます;腎は水臓であり、腎水上行して心火を済します(助ける、抑えること)。これを心腎相交、又は水火既済と言います。腎陰不足ですと、腎陰を上済できないので心陽偏亢となります。また、心火が熾盛すると、下に及ぼし腎陰を損傷してしまうこともあります。いずれも、心腎の陰陽水火が協調既済の関係を失うので、そこから心腎不交の病理変化が形成されます。

  腎陰虧少、水不上済、心陽偏亢、虚火内擾なので心神不寧となり、故に心煩不眠、驚悸多夢が見られます。陰精不足なので耳目失養、脳髄不充となり、故にめまい、健忘、耳鳴、腰酸、膝軟を招きます。陰不斂陽、相火偏旺、擾乱精室の故に夢精する。陰液損傷されるので口乾、盗汗、潮熱、尿黄、便結、脈細数を見ます。腰と下肢のだるい、冷えを兼見するのは、陰損が陽に及ぶか火不帰原、陰寒下凝のためです。

②心腎陽虚証:心腎臓の陽気が虚衰して温運できなくなった虚寒証候です。多くは長期の病が腎に及ぶ、或は労倦内傷によるものです。

【臨床表現】:動悸怔忡、形寒肢冷、或はぼんやりして、眠くなる。小便不利、顔や肢体の浮腫、或は唇甲が青紫色、舌質青紫或は暗淡、苔は白滑、脈は沈微細になります。

【証因分析】:本証の弁証要点は、心腎両臓の陽気虚衰で、全身の機能活動が低下状態になっていることです。心は君火で、血液を温運、推行し、腎は命火で、水液を気化し、心腎の陽が協調共済して、臓腑を温暖、血液を運行、津液を気化させます。故に心腎陽虚は常に陰寒内盛、血行瘀滞、水液停蓄の病変として表現されます。陽衰だと生体を温養できないので、形寒肢冷となります。心腎陽虚は心の鼓動乏力を招き、血液が温運させず血行瘀帯を招くので、心悸怔忡、唇甲青紫、舌質青紫暗淡、脈沈微が見られます。心腎陽衰は腎陽の水液気化不能を招き、水液が内で停滞するので、小便不利、肌膚に泛溢すれば身腫、水気凌心すれば怔忡喘息となります。

2つの証とも心と腎の兼証ですが、①は陰虚火旺の証、②は陽虚内寒の証で、正反対の証です。


(李)
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by jbucm | 2009-05-28 09:33 | 中医学 | Comments(2)

気血津液と臓腑の話(59)


こんにちは、皆さんは良い連休を過ごしましたでしょうか?私は、家でのんびりしていました。さて、今日から連休明け、本格的に仕事を始めましたので、早速、先週に続いて腎と膀胱の病証を紹介しましょう。先週で腎の常見病証を紹介終わりましたので、あとは膀胱の病証になりますね。

 膀胱の病証は、主に尿の排泄に関する病証で、主な症状は頻尿・遺尿、或は排尿痛や血尿などです。前に話しましたが、尿液の排泄は腎の気化機能に頼り、頻尿・遺尿・尿失禁などは皆腎気虚弱に関係し、腎気不固証のところで話しました。排尿痛や血尿などの症状は、膀胱湿熱証に属します。

膀胱湿熱証:湿熱の邪気が膀胱に侵入し、排尿異常を引起こす病証です。多く外感湿熱の邪が膀胱に侵入するか、飲食の不節別により、湿熱が内生し、膀胱に下注して招致されます。

【臨床表現】:尿意が急で回数が多く、小腹部の脹痛、排尿に灼熱或いは渋痛感があり、小便黄赤か渾濁、血尿や、尿の中に砂石がある場合もあります。発熱を伴い、口渇だが多飲せず、腰酸脹痛があり、舌紅苔黄膩、脈は滑数です。

【証因分析】:湿熱蘊結、膀胱気化異状の故に小便の回数が多く、短渋不利、淋漓不尽(だらだらして、なかなか終わらない)。膀胱は小腹にあり、湿熱阻滞、内擾膀胱、下迫尿道なので、小腹部の脹痛、尿意が急で排尿灼熱、渋痛が現れます。湿熱が陰絡を損傷するので血尿となります。湿熱が膀胱に長く篭り、尿垢を熱すと、砂石になることもあります。膀胱と腎は相表裏し、湿熱が膀胱に蘊結され、腑から臓へ及ぼし、腎に影響するので腰酸脹痛を見ます。身熱、渇しても多飲しない、苔黄膩、脈滑数等は湿熱内蘊の徴候です。

 以上、今回を持って、各臓腑の話を一段落しましたが、次回からは、臓腑兼病の弁証も紹介したいと思います。

(李)
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by jbucm | 2009-05-07 13:00 | 中医学 | Comments(0)

気血津液と臓腑の話(58)


こんにちは、今日は、腎気虚による良く見られる二つの証を紹介致します。3月26日に腎の生理機能を紹介しました。腎気の二つ大きな機能は、固摂と納気です。これらの機能が弱まると、下記の証が見られます。

腎気不固証:腎気虧虚により、下元の固摂失職を招く証候です。多くは加齢で腎気の衰弱(老人の場合)、或は幼少で腎気が不十分による(子供の場合)か、長期の病や房労過度により腎気が損傷されるにより下元不固に起こります。

【臨床表現】:顔色が白、神疲、耳鳴、腰膝のだるさ、小便の回数が多く清澄、尿が切れない、遺尿、小便失禁、或は夜尿が多い。滑精、早漏、月経淋漓、帯下が多くて薄い、胎動易滑(流産し易い)、大便失禁、滑泄不止、畏寒肢冷、特に腰膝が冷える、舌は淡で脈が沈弱です。

【証因分析】: 本証の診断要点は、膀胱と生殖器官の固摂失職の症状が現れることです。
耳鳴り、神疲、腰膝のだるさ、脈沈弱などは腎気虧虚の表現です。腎気虧虚すれば、封蔵固摂の機能が失われますので、まずは膀胱の失約することがあり、小便の回数が多く清澄、尿がなかなか切れず、夜尿、遺尿、尿失禁などを見ます。また、精関不固なので滑精、早漏で、女性の場合は、衝任虧損になり、早漏、月経淋漓、帯下が多くて薄い、胎動易滑を見ます。なお、腎虧で後陰(肛門)が固摂されず、大便失禁、滑泄不止を見ます。畏寒肢冷、腰膝の冷えを見れば、それは腎陽もすでに衰えた表れです。

腎不納気証:腎気虧虚により、納気されず短気喘息を表す証候で、肺腎気虚と呼ばれます。多くは長期の病による咳喘、肺気の損傷によるか、先天腎気の不足、加齢による腎気虚衰、労損傷腎等により、腎気虧虚、納気不能を招きます。

【臨床表現】:慢性的な咳、呼多吸少、動くと喘ぎがひどく、痰は稀薄、場合によっては咳の際尿が出る(腎気不固証が伴う場合)、自汗神疲、声が低く怯、耳鳴、腰膝のだるさ、舌が淡で厚く、苔は白、脈は沈弱です。なお、息切れのひどい場合には冷汗淋漓、肢冷面青、脈浮無根が見られます。或いは気短息促、頬紅心煩、燥擾不寧、咽乾口燥、舌紅少津、脈細数を見ます。

【証因分析】:本証の診断要点は、慢性的な咳、呼多吸少、肺の中に気が足りないような感じ、動くと酷くなり、肺腎気虚の症状が伴うことです。肺は呼吸を司り、腎は納気を主る。「肺は気の主であり、腎肺は気の根である」と言います。故に肺腎気虚の病変は常に呼吸気息の機能減退として表現されます。本証の本はすでに腎に及んでいるので、臨床上では「腎不納気証」と呼ばれます。

 肺が吸い込まれた気を腎が受け取る(受納する)、肺腎気虚だと、気不帰元(腎失摂納、受納できず)、故に呼多吸少、気短喘促。気虚なので、動くとひどくなります。また、肺腎気虚、気化不能、津液散布不能なので、集聚して痰飲を成し、痰飲が肺にとどまると、咳嗽で、稀薄な痰が出ます。なお、肺虚すれば宗気も衰微で、衛表が固密できないため、常に自汗する、全身の機能が低下するので、声が低く怯えます。腎気不固、膀胱失約のため、咳と一緒に尿が出るか、尿が切れないことも見られます。腰膝がだるい、耳鳴等は腎虚の徴候です。

腎不納気は気虚を主とし、通常は陽虚に偏るが、陰虚に偏る場合も見られます。腎気虚極、腎の陽が衰弱の場合は、息切れがひどいと、冷汗淋漓、顔面蒼白で肢厥、脈浮無根の虚陽外浮の象、又は陽気欲脱の勢が見られます。腎の陰が衰弱の場合は、頬紅、咽乾、燥擾不寧、舌紅少津、脈細数等の症を併発し、気虚と陰液虧少を兼ね、陰不斂陽、陰虚内熱を招きます。

では、よい連休をお過ごし下さい、また来週。

(李)
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by jbucm | 2009-04-30 09:48 | 中医学 | Comments(0)

気血津液と臓腑の話(57)


腎陰虚証:腎の陰液が不足で現れる証候です。多くは長い病気、或は温燥品の飲みすぎにより腎陰を損傷するか、先天不足や、不節制な情欲により、腎陰が損傷されて生じるものです。

【臨床表現】:腰膝のだるい痛み、めまい、耳鳴り、不眠健忘、歯や髪が抜ける、男子が遺精、女子の場合は月経困難か夢交、崩漏。形体消痩、潮熱盗汗、五心煩熱、咽乾、午後の頬赤、小便短黄、舌紅少津、脈細数になります。

【証因分析】:本証の弁証要点は、腎病の症状に陰虚内熱証が伴うことです。腎陰は全身陰液の根本で、臓腑形体を滋潤し、脳髄骨格を充養し、腎陽を抑制して妄動させない等の機能があります。腎陰が虧損されるので、臓腑形体はその滋養を失い、精血髄液が不足して脳髄骨格がその充養を失い、腎陽がコントロールされないので相火妄動して内熱を生じます。

 陰虧髄少で脳髄空虚、骨格欠充なので、めまい、耳鳴り、健忘、歯や髪の抜け、腰や膝のだるい痛みが見ます。形体、口舌は陰液の滋養を得られないので、咽乾口燥、形体消痩を見ます。陰虚して陽をコントロールできず、虚火が内擾するので、五心煩熱、潮熱、盗汗、頬紅などがあり、虚火上擾、神志不寧なので不眠多夢。相火妄動、擾乱精室なので夢精、女子は月経量は少ないか月経困難になります。一方、虚火が迫血妄行で崩漏を招くことも見られます(特に、更年期女性の不正出血によく見られます)。


腎精不足:腎精虧少による、生殖生長機能低下の証候です。多くは先天の不足(先天的元気の不十分)によるか、後天の失養、長期の病、過度なセックスにより腎精虧損を招きます。

【臨床表現】:小児の発育遅れ、矮れ、知力と動作遅鈍、泉門の閉鎖が遅れ、骨格の痿軟など。性機能が減退し、成人の男子が少精子か無精子、女子が無月経による不妊。また、老化が早い、髪や歯が抜ける、耳鳴り、健忘、足の萎え、痴呆などになります。

【証因分析】:本証の弁証要点は、子供の場合は、生長と発育の遅れ;成人の場合は、性機能の減退と不妊、或は、早老や痴呆などです。

 『素問・上古天真論』にいう:「腎は水を主どり、五臓六腑の精を受けてそれを蔵す。故に五蔵盛んなれば能く瀉す」。腎精の源は先天にあるが、後天の充養に頼ります。腎精は生殖と生長発育機能の盛衰として表現されます。

 腎精虧少で性機能が衰え、男は無精子不妊、女は無月経不妊となります。精は虧すと髄不足が生じ、髄汁虧虚なので、骨格、髄腔、脳海が充養されず、骨格失充、脳髄空虚なので、小児に五遅(立遅、行遅、髪遅、語遅、歯遅)、五軟(頭軟、項軟、手足軟、肌軟、口軟)が見られ、成人すると歯や髪が脱け、耳鳴り健忘、足が萎える等を見ます。
 
3月19日にも紹介しましたが、腎中の精気が虧損されていても、陰陽の失調がはっきりしていなくて、特に腎陽虚や腎陰虚の症状がみられないこともあり、上記の症状だけの場合は、それを腎精不足と呼び、治療は補精益髄(動物の骨や肉類のものを用いる)をします。

(李)
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by jbucm | 2009-04-23 09:17 | 中医学 | Comments(0)

気血津液と臓腑の話(56)


 こんにちは、今日からは、腎と膀胱病証の弁証を紹介致します。

 まず、腎と膀胱の生理をまとめましょう:腎は精を蔵し、命火を主り、腎精は元陰で、生殖と生長発育の根本物資、命火は元陽で、生命活動の原動力です。故に腎は「先天の本」、「水火の臓」、「陰陽の根」と言われています。また、腎は水を主り、気を受納する機能もあります。腎の特徴は潜、蔵、即ち元陰元陽は固秘をよくし、耗泄妄動しないことです。腎と膀胱は相表裏し、膀胱は「州都の官」で、貯尿および排尿の機能があります。腎と脳、髄、骨、女子胞等奇恒の腑は密接に関係しています。腰は腎の腑であり、耳は腎の竅、腎気は二陰に通じ、腎の華は髪にあり、歯は骨の余りです。

 腎の病変は主に生長発育、生殖機能、水液の代謝異常として反映されます。脳、髄、骨および呼吸、聴覚、大小便の異常等もまた腎の病変の可能性があります。腎の病は陰、陽、精、気虧損を常見するので、多くは虚証です。腰膝酸痛、耳鳴り、歯や髪が脱ける、インポテンツ、月経困難、不妊、水腫、大小便異常等は腎病の常見症です。膀胱の病変は一般に排尿異常か尿液変化として反映されます。

 腎陽虚証:腎の陽気虚衰の証候で、多くは素体が陽虚、高齢による命門火の衰え、或は長期の病による傷腎や、他の臓腑に陽気の虧虚、過度のセックスによる傷腎によって招かれます。


 【臨床表現】:腰膝痠軟(ようしつさんなん、腰膝酸軟とも書きます。腰や膝がだるくて痛い)、形寒肢冷(寒がり、四肢の冷え)、腰膝以下が甚しい。眩暈、無気力、顔色が晄白(こうはく、光沢のある白)か黧黒(れいこく、暗くて黒い)、舌質か淡胖、苔が白、脈は沈弱、両側の尺が甚しい。次の症状も見られます:男子がインポテンツ、女子が官寒(子宮の寒冷)による不妊、性欲低下、小便が清澄で尿量が多い、夜間尿が多いなど;或は慢性下痢、五更泄瀉(ごこうせっしゃ、夜明けの下痢);或いは尿少で浮腫、腰以下の腫がひどい、押すと指が埋まる、酷い場合は、腹部脹満、全身に浮腫み、動悸気短、喘咳痰鳴。

 【証因分析】:この証の弁証要点は、全身の機能低下と寒象(形寒肢冷)があることです。胃陽、即ち命火は全身陽気の根本で、全身を温め、水液を気化し、生殖発育を促進します。腎陽不足すると、命門火衰なので、形体はその温暖を失い、寒気が内から生じて、気化できなく、水液代謝異常となります。命門は下焦の元陽で、腎陽不足のため、形寒肢冷、下半身(腰膝以下)がひどくなるわけです。命門火が衰えて、性機能が促進されないので、性欲が減退し、インポテンツ、不妊となります。陽気が水液を気化できず、水液は下へ向かうので、小便は清澄で、夜尿が多い。一方、陽が衰え気化されず、泌別尿液不能として表現される場合もあるので、小便不利にして尿少となります。水液の排泄が阻害され、体内に蓄積して肌膚に溢れるので、浮腫を見ます。水液は陽気の蒸騰を得ないと、勢い下降して腰以下の腫がひどくなる。陽虚水停、中焦の気機不調なので、腹脹満悶するが、これは「水反侮土」であることです。水邪が泛濫し、心陽を抑えるので、動悸気短を見るが、これは「水気凌心」であることです。水泛は痰となり、痰飲が肺にとどまるので喘咳、痰声となるが、これは「水寒射肺」であることです。舌は淡胖、苔は白、脈沈弱等いずれも腎陽失温、陽虚水停の徴候です。両尺脈は腎の脈なので、腎陽虚の故に、両尺脈がとくに弱るわけです。

 腎陽虚証は、臨床でよくみられる証です。他の証と伴って表れるケースが多いです。特に陽虚体質の人や、高齢者や、或は慢性病を持つ人に、上記の症状がありましたら、他の病証を治療の同時に、温補腎陽もしましょう。

 では、また次回。

 (李)
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by jbucm | 2009-04-16 11:00 | 中医学 | Comments(0)