③心脾両虚証:心血不足と脾気虚弱により表れる証候です。多くは長期の病による体虚、或は慢性出血、或は過度な思慮か過労により心血と脾気が虚弱しているものです。
【臨床表現】:心悸怔忡(せいちゅう、動悸のこと)、不眠多夢、めまい、健忘、面色萎黄、食欲不振、腹脹便溏、倦怠乏力、或は皮下出血、月経量少で色淡、淋漓不尽(だらだらして、終わらない)など。舌質淡嫩。脈細弱です。
【証因分析】:本証の弁証要点は、心悸不眠、顔色の萎黄、疲れ、少食、腹脹便溏と慢性出血です。脾は気血生化の源で、また統血の機能もあります。脾気虚弱すると、生血不足になり、或は統血機能が弱まって、慢性出血を引き起こし、いずれも心血虧虚を招きます。なお、心主血、また血は気の母ですから、心血が不足すると、化気ができず、脾気虚も発生します。なので、脾気虚と心血虚二者は病理上では、よく相互影響し、結果的に心脾両虚になります。
心血不足で心筋を養われないので、心悸怔忡、心神不寧、不眠多夢が現れます。頭も養われないから、めまい、健忘などを見ます。面色萎黄、食欲不振、腹脹便溏、倦怠乏力は脾気虚の症状です。なお、出血の症状も脾虚で摂血できないからです。舌脈は気血不足の候です。
④心肺気虚証:心肺気虚による動悸喘咳の証候です。多くは、長期の病による体虚、長期の咳による傷肺、過度の労働による気の消耗、脾虚生気の源不足等で心肺の気を両方虚弱になります。
【臨床表現】:動悸咳嗽、気短にして気喘、動くとひどくなり、胸悶、薄い痰がでる、声は低い、めまい、神疲乏力、自汗、顔色淡白、舌淡苔白、脈沈細或は結代(不整脈)です。
【証因分析】:本証の弁証要点は、動悸咳嗽と気虚がともに発生することです。肺気虚弱していると、宗気の生成が不足になり、心気虚を招きます。また、先に心気不足であれば、宗気も消耗され、肺気虚を招きます。故に心肺の機能活動はいずれも宗気によって推動され、心気虚弱か肺気虚弱は宗気不足の表れです。心は血を主り、肺は気を主る、気はそれによって血を統率し、血はそれによって気を載せ、いずれも宗気が本となります。従って心、肺の気虚は互いに影響しあいます。咳嗽、気短、気喘、動くとひどくなり、痰がでる、声は低い、自汗などは肺気虚の症状で、動悸、めまい、神疲乏力、顔色淡白、脈沈細か結代などは心気虚の症状です。
では、次回は脾肺気虚証と心肝血虚証を紹介致します。
(李)