* 陰陽消長(いんようしょうちょう): 陰陽の対立制約、依存は静止的な状態ではなく絶えず運動変化している。「消長平衡」と呼ばれる。
人体の生理活動からみても、昼間は陽が盛んになり、生理機能は興奮し、夜に陰が盛んになり、生理機能は抑制的になり、夜半からは陽気が段々盛んになり生理機能は抑制から興奮に移り、「陰消陽長」の過程となる。日中から夕方にかけて陽気が減衰、陰気が盛んになり、生体の機能は興奮から抑制に向かい、「陽消陰長」の過程となる。陰陽の消長は絶対的、静止的平衡状態でなく、相対的、動的な平衡である。
実は、陰陽の消長は陰陽対立の表れの一つである。前々回紹介しました
陰勝則陽病(いんしょうそくようびょう)及び
陽勝則陰病(ようしょうそくいんびょう)がその例である。それが陰陽の病理的な消長で双方の相対的なバランスが損なわれ、陰または陽の「偏盛」が起こって、陽または陰の「偏衰」が現れることである。
* 陰陽転化(いんようてんか): 陰陽転化というのは双方対立する事物が一定の条件下で反対側に転化するという変化形式をいう。すなわち陰から陽に転化、陽からも陰に転化できる。陰陽の相互転化は一般には事情変化が極まった段階に発生する。「陰陽消長」が量の変化の一つの過程とするならば陰陽転化はとりもなおさずその量の変化を土台としての質の変化ということができる。陰陽の転化は突発的に発生することもあるが、多くの場合は量の変化を積み重ねて質の変化を遂げるといった具合である。
陰陽の転化は条件が揃わなければならないが、
「重陰必陽、重陽必陰」(重陰は必ず陽となり、重陽は必ず陰となる)、
「寒極生熱、熱極生寒」(寒極まれば熱を生じ、熱極まれば寒を生ず)(『素問・陰陽応象大論』)。まさにここの「重」と「極」は転化の条件である。
生理及び病理のほうからみても抑制と興奮の互いの転化もそうである。疾病の発展過程には、陽から陰に、陰から陽に変化することはよくある。例えば、一部の急性温熱病の場合、熱があり過ぎて、生体の元気は大量に消耗され、突然体温が下がり、顔色が白くなり、四肢は冷たく、脈は弱くなるなどの陽気が極めて少しなくなったような症状の変化は「陽証」から「陰証」になったのである。この時、処理が適当なら四肢が暖かくなり、脈は和らぎ、陽気は回復され、病気もよくなるだろう。また外感の寒証の患者の場合、陰証に属するが、ある原因によって熱に変わることもあり陰証から陰陽に変わる。前者の熱があり過ぎて陽気は津液と一緒に排泄され、後者の寒は溜まり、これらは転化の条件になる。
(李)