先週は五行の病理関係である相乗と相侮を紹介しましたが、今回は五行に関するもう二つ病理関係を紹介します。それが相生関係の伝変で、母病及子(ぼびょうきゅうし、母病が子に及ぶ)と子病及母(しびょうきゅうぼ、子病が母に及ぶ)という二つです。
* 母病及子(ぼびょうきゅうし):母病が子に及ぶというのは母になる臓器から子になる臓器に伝えるという具合のもので、例えば腎が水に属し、肝は木に属す。腎は母臓で肝は子臓、腎の病気が肝に伝わるというのは母病及子ということになる。臨床でよくみられる「肝腎(精血)不足」と「水不涵木(水が木を潤わない)」は母病及子という範囲に入る。それは、まず腎精不足することによって、肝臓に及び、肝の血液も不足して、「肝腎の精血が不足になる」という状態になってしまう。また、腎水が不足しているから肝木を滋養することができなく、肝腎が陰虚、肝陽が昂進、「水が木を潤わない」状態になる。
* 子病及母(しびょうきゅうぼ):子病が母に及ぶというのは子臓から母臓に伝えるという具合のもので、また「子盗母気」とも呼ばれている。例えば肝が木に属し、心は火に属し、木から火を生じる。肝は母臓、心は子臓になる。心の病は肝に及ぶと、すなわち子病及母という。臨床によくみられる心肝の血が虚と心肝の火が盛んという症状は皆子病及母という範囲に入る。それは、まず心血の不足によって肝臓及び、肝の血も不足になり、心肝の血が虚になる。また心の火が盛んになり、肝臓に及び肝の火を扇動し、心肝の火が盛んという状態になってしまう。
ここで、指摘しなければいけないのは、五臓の関係はお互い影響し合い、作用し合い、一つ病気になれば外にも影響するということであり、事実上完全に五行学説で説明することはできない。疾病の場合、邪気の性質の違いや、患者の状況、疾病の発展法則の差によって、五臓の伝変も必ずしも完全に生克乗侮の法則には従わない。
(李)