こんにちは、周です。今回は「柳宗元と淫羊藿」の話です。
柳宗元は唐の時代、著名な文学家。彼は首都から遠く離れた、当時貧困の地方―永州(湖南省零陵周辺)にとばされました(左遷されました)。永州の気候は冬が寒冷で、夏が酷熱(酷く暑い)です。そんな厳しい環境の中、赴任後の間もなく、彼は病に罹りました。特に両足痿弱無力、歩行困難となり、生活にも障碍しました。
柳宗元は現地のある老薬農(中薬を栽培する人)に教われた草薬を探し出して、自ら栽培・加工・服用します。暫く服用続けると、病が治しました。それは思いがけないことで、彼は大喜びでした。
その草薬は淫羊藿(仙靈脾)と言い、メギ科のシロバナイカリソウ、ホザキイカリソウEなどの葉です。辛・甘、温で、肝・腎経に帰経し、補腎壮陽・袪風除湿の作用があります。陽萎・尿頻(頻尿)・腰膝無力・風寒湿痹・肢体麻木に用います。
≪本経≫に「主陰痿絶傷、茎中痛、利小便、益気力、強志」とあり、≪本草備要≫にも「補命門、益精気、堅筋骨、利小便」と記載されています。
日本では、イカリソウと言い、民間薬として使われています。強壮、強精の目的で、乾燥した地上部の茎葉を1日量8~10グラムに水0.5リットルを加えて、約半量なるまで煎じ、お茶代わりで服用します。神経衰弱、健忘症や強壮強精にもよいとされますが、心臓の悪いひとや胃腸の弱い人は飲まないようにします。
なお、ホザキノイカリソウの根は淫羊霍根(いんようかくこん)と言い、こしけ、月経不順、喘促、鳥目などに1日量10~15グラムを煎用します。薬酒にも使われます。
附:柳宗元(773~819年)は中国・唐の時代の文学家・政治家です。本籍は河東(山西省)から、「柳河東」「河東先生」と呼ばれます。また、その最後の赴任地(柳州)に因み、「柳柳州」とも呼ばれます。唐宋八大家の一人に数えられます。政治家としては、確かに不遇にありましたが、左遷された以後の作品を見ますと、政治上の挫折がかえって文学者としての大成を促成したのではありませんか?指摘されるところであります。