こんにちは、周です。今回は中国語―百発百中の話です。
戦国時代、楚国に養由基という、弓の名人が居ます。ある時、数千人の大観衆の中で、百歩離れた所から、柳の葉を的にし、射ます。矢を百発放って、百発命中させたと言います。
紀元前三世紀(戦国時代)、七つの国が天下を我がものにしようとしのぎを削った、戦国の時代も、ようやく終りに近づき、秦の優勢が、誰の目にもはっきり見えてきます。その最大の功労者である将軍、白起と言います。彼は用兵が巧みで、しかも状勢判断も確かで、連戦連勝で、負け知らず。その白起が、今度は魏の都を攻め落とそうと、出撃の準備をしています。こうなると、魏の隣り、周までが、大変な騒ぎであります。もし魏の都が秦の手に落ちれば、次に狙われるのは自分だからです。
周の赧王は、どうしたものかと考え込みました。蘇厲という男が、「こうなったら使者を遣わし、白起に次のように説かれては如何でしょうか」。蘇厲は王に養由基の話を聞かせ、更にその先を言います。
―養由基の腕まえに見物人は熱烈な喝采を送りました。と、そばに立てる男がつぶやきます。
「いい腕前をしておる。ひとつ、弓のなんたるかを教えてやるとするか」。それを小耳にはさんだ養由基は怒りました。「何を言ってるんですか、わしに弓について説教しようとは、生意気な奴」
「何に弓の技を教えるつもりはないが、百歩離れた所から、柳の葉を射て、百発命中だったにしても、上手い・凄いと褒められているうちが花。いいかげんで辞めなければ、そのうちに気力は衰える。弓は反って来るだろうし、矢も曲がってくる。一発でも外したら、今まで百発中ててきたのも水の泡だ。物事には潮時というものがあるのだ。」
蘇厲の策というのは、白起にも同じ手を使い、こう説こうというであります。
「連戦連勝、あなたの戦上手には舌を巻くしかありません。そして今、魏の都を攻め落とそうとなさっています。一遍に攻め取ることができれば問題はありませんが、もし一度でも負けることがあれば、今までの功績はすべて帳消すとなります。出陣を考え直すべきです」。
赧王が、この蘇厲の進言を取り上げたかどうかは分りません。記録に残されていないからです。但し、それから数十年後、秦は全中国を統一したのであります。
百発百中の意味としては、矢や、弾丸などを撃つたびに必ず命中させることを言います。また、派生の使い方としては、自分が立てた予想や、計画などが、思い通りに進み、成功することに百発百中という言葉を使います。
弓矢でも何でもそうですが、百発百中を狙えるほどになる為には、それをこなせるほど様々な経験を積まなければなりません。最初から何でも出来るという人はいません。しかし、それを出来るようになるまで何度も何度も練習し、経験を重ねることにより、初めて出来るようになります。
勉強においても、一度解けた問題だからといって、直ぐに次の問題に進むのではなく、何度出題されても確実に、百発百中で解けるようになってから次のステップに進むと言うことが大切なのです。一歩一歩確実に進んでいきましょう。