≪紅楼夢≫清朝の乾隆帝時代(18世紀中頃)に書かれた中国長篇小説です。≪三国志演義≫≪水滸伝≫≪西遊記≫とともに旧中国の傑作古典小説に数えられ、「中国四大名著」とも言われます。
≪紅楼夢≫には医学に関する話が多くあります。有る人が統計してあります:医薬・衛生知識290か所・約5万字。医学熟語161条、症例114、中医の医案13、方剤45、中薬125、西薬3 にも及びます。小説の中に、そんな多くの医薬知識を書かれたとは、中国文学史上に於いて勿論ですが、外国文学史上にも、極まれであります。
例えば、第7回の「送宮花賈璉戯熙鳳、宴寧府宝玉会秦鐘」に、幼少時の薛宝釵のことを書かれています。彼女は病に患い、当時の名医に診察・治療を受けましたが、効果が全然有りません。その後、癩(黄癬、カビによる皮膚病で、頭髪に多発する)頭和尚に出逢い、生れ付きによる熱毒と診断され、「海上方」という方剤を処方されました。「海上方」を服用した薛宝釵は病気が治りました。「海上方」は露・霜・雪・蜂蜜と4種類の花蕊(花のしべ)から組成されます、4種類の花は(春に咲く)白牡丹・(夏に咲く)白荷花・(秋に咲く)白芙蓉・(冬に咲く)白梅花であります。
第28回・黛玉の話です。黛玉が大夫(医師)に「天王補心丹」を処方されました。「天王補心丹」は臨床常用されている中成薬です。地黄・白茯苓・人参・遠志・当帰・酸棗仁などの中薬から組成されます。滋陰養血・補心安神作用があり、心血不足・神志不寧・心悸・盗汗・心煩・失眠に用います。黛玉は幼少時から「気弱血虧」と診断され、気弱で外邪に対する抵抗力が低くて、風・寒・暑・熱に当たると、不調になります。陰血不足(血虚)のため、陰虚生火し易い、五心煩熱・両顴紅赤・形体消痩・潮熱盗汗という症状があります(咳嗽・咯血もあります)。現代医学と言えば、彼女の病は肺結核に間違いないですが、当時には特効薬がなかったため、作者の曹雪芹が「天王補心丹」を服用させたのは、最も適宜であるかもしれませんね。
周