中医薬と人体免疫⑥
北京中医薬大学教授 高 春媛
二、中医薬で人体の免疫力を増強する
1、未病先防と既病防変の観念と方法
『内経・四気調神論』はこう述べでいます:「故に聖人(賢い人)は病になってから治療を受けるではなく、病気が発生する前に予防する。これは、国を管理すると同じで、暴動が発生してから治めるのは、間に合わないだろう。病気になった後から薬を、暴動が発生した後に治めるのは、喉が渇いてから井を掘る、戦争が始まる前に兵器を鋳造するに如く、遅すぎるではないか?」
『金匱要略』にもこういいました:「肝の病を見たら、脾に伝わると知り、先に実脾(脾を補う)するべきである。」
未病先防とは、体を強め、免疫力を高めとのことで、下記の四つの方面から行うべきです。
①精神調養:常に愉快で楽観的な気持ちで、ちょっとの損得にくよくよしない。意志が強く、積極的前向きにする。
②体を鍛える:気血を通暢させ、筋骨を強める。気功・ダンス・体操・拳術・武術などの方法たくさんあるが、自分の体にあった方法であれば、どれでも良いです。
③生活の調節:リズム正しい生活と節制のある飲食をすることです。
④食事の内容は季節に合うこと、決まった時間と決まった量で食事すること、主食と肉類、野菜類、果実類の配合は因人制宜(その人その人の体質に合わせる)することです。
なお、既病防変には、早期の診断治療、併発症などの予防に念入りしましょう。
2、陽気を保護することで、疾病に対する抵抗力が増強できます。
①気虚と陽虚
気虚は、陽虚の量的変化である。程度上少しずつの目立たない変化をする。過労や、飢え、過食、情志の変化などによって発生する。
陽虚は、気虚が高じれば質的変化につながる結果です。「陽衰の病は、到る所に存在する。その発生の由来は漸次で、目立たないため、察することがなく、どうしてこうなったのが分からない。知らずのうちに酷くなってしまい、始めに治療し難くなったと発覚する」。これは、陽虚証と特徴であり、変化が小さくて、進展が遅いから、自らで分かり難いとの説明です。
②陽虚証の治療原則
用薬の時機:「回陽の功力は、陽気が去る前に入れるべき。少しずつ入れることで、陽気を取り戻すことが望める。若し、陽気が既に無くなってから入れると、冷たくなった灰がもう一度燃え出すことができないと同じで、息を吹き返すことができない。」
用薬の基準:「虚弱で、別に熱証がない者は、陽虚の症候であり、温補元気で陽気を段々回復させるべき。」
「虚証の有無を論じなく、実証がなければ、補を兼ねることが可能である。」
「寒証の有無を論じなく、熱証がなければ、温を兼ねることが可能である。」
薬効の観察:「補益薬を服用したら、病状が増えてなければ、減っていると言え、体内に補を受けた訳である。しゃする薬を服用したら、病状が減ってなければ、増えていると言え、体内に殺めを受けた訳である。」
最も良い補益薬:「附子は性勇猛のため、単独で使うと難しい。大甘の品である人参・黄耆・甘草などに配合すれば、後者がその強みを制約し、薬効の発揮に助ける。」
人参と黄耆に関する論述:「人参は、大補元気の完璧なもので、五臓をすべて補し、三焦をすべて調和できる。陰のところにいれば、陰を補し、陽のところにいれば陽を補す。人参は体のあらゆる場所に元気を救うことができるが、結局元気の根を下ろすことができない。これは、人参の補の作用は迅速だが浮薄だからである。人参の作用に対して、黄耆の補の作用は重くて確実である。長い効果を求める場合は、黄耆でなければならない。もし、しばらく人参と黄耆一緒に使うなら、風と雨に恐れることがなく、寒と暑の邪気が侵入することがない。普段体質の弱い者は、知らず知らずのうちに、生まれ変わったように感じる。」
補陽法の特徴:ア 王道に近功がない。常に食べる、長く続けることが大事です。
イ 量を少なくし、品種を多く選ぶ。合理的な配伍。
ウ 動物性の物、良質なタンパク質などを選ぶ。例えば、ナマコ、つばめの巣、ふかひれ、鹿茸、鹿血、鹿膠、阿膠、三鞭(オスの動物の性器)、亀、すっぽん、淡菜(貽貝の干物)、狗腎など。
(訳:李)