一 『黄帝内経』の成書年代、伝わり及び主な注釈書
『黄帝内経』(こうていだいけい、こうていだいきょう)は、現存する中国最古の医学書とされている。『黄帝内経』という書名は、最初に図書目録である『漢書・芸文志』に医学書として記載されてあった。一般的な見解では、西(前)漢代の中後期に編纂されもので、『素問』(そもん)と『鍼経』(しんきょう)二部各9巻81篇、全162篇)があったとされている。
しかし、これらは散逸して現存せず、唐代の王冰(おうひょう)が家に収蔵していた欠本のある『張公秘本』を大量な時間を掛けて補欠、遷移、別目、文字の加減、そして注釈を加え、順番を並べ替えなどして、『素問』と『霊枢』(れいすう)を編纂した。それが元になって伝えられていた。ただしその後、『霊枢』の9巻本も散逸してしまい、現在は1155年に南宋の史崧が霊枢を新たに校訂し、24巻81篇として編纂したものが通用されている。
『素問』の書名は、最初に東(後)漢代の張仲景氏の『傷寒雑病論』に記載されていた。『霊枢』は最初では『九経』と称され、これも張仲景氏の『傷寒雑病論』の自序に記載されていた。晋代皇甫謐が『鍼灸甲乙経』の序には『鍼経』と称したが、本書のなかでは、しばしば『九経』と呼んだ。唐代の王冰氏が初めて『霊枢』と名付けて『素問』の序に書かれた。
『黄帝内経』の注釈書はたくさんある。その中、代表性のある幾つを挙げてみる。
①『黄帝内経太素』(略称は『太素』たいそ)、唐代の楊上善が『黄帝内経』を注釈したのである。楊氏は「以類相従」という方法で、『素問』と『霊枢』の原文を次のように十九種類に分類された:摂生、陰陽、人合、蔵府、経脈、腧穴、営衛気、身度、診候、証候、設方、九鍼、補瀉、傷寒、寒熱、邪論、風、気論、雑病。さらに各種類を若干の細目にし、その原文の下に注釈を書かれた。この本は後世の学者らが『内経』を研究するに、大変便利な参考書となっている。この『黄帝内経太素』は現在、日本の京都の仁和寺に所蔵されている。
②『黄帝内経素問』(唐代・王冰)
③『黄帝内経素問注証発微』及び『黄帝内経霊枢注証発微』(明代・馬蒔)
④『素問呉注証』(明代・呉崑)
⑤『類経』(明代・張介賓)
⑥『内経知要』(明代・李中梓)
⑦『黄帝内経霊枢集注』及び『黄帝内経霊枢集注』(清代・張志聡)
⑧『素問識』(そもんしき)及び『霊枢識』(れいすうしき)(日本・丹波元簡)
ちなみに、『漢書・芸文志』には、『内経』(18巻)の他に『外経』(37巻)があったとの記録があるが、残念ながら、『外経』は現存せず、詳しいことはわかっていない。
(編集:李)