五 『黄帝内経』の学術特徴
『黄帝内経』の学術特徴は、三つの内容がある。すなわち、機能の角度から生命の規律を把握する;整体の角度から生命の規律を把握する;変化の角度から生命の規律を把握する。
①機能の角度から生命の規律を把握する
中国古代の医家は、解剖だけでは直接生命現象の解釈と医療活動の指導ができないと意識したあと、当時盛んになっていた自然哲学方法を採用するようになった。まず、生命現象とそれに関連する各方面を観察し、得た内容の中に「共性」のあるものをまとめた。そして、形態、機能、構成、進展変化の方式などを分類し、代表性のある「共性的」なものを象徴的な記号や画像或は代表性のある具体的な事物で表した。続いて、これによって類推し、生命現象のメカニズムを詳細に検討した。これは、古代の意象思惟方式である。こういう思惟方式での研究は、解剖的な実体性の概念ではなく、機能性の概念しか生み出さない。とはいうものの、中医学概念と実体臓器と一致しなくても、構造と機能の統一の原則と食い違っているわけではない。
つまり、機能の角度から生命の規律を把握することは、機能が主で、形態が次というふうに『内経』の関連する理論を理解することである。
②整体の角度から生命の規律を把握する
整体観とは、普遍的関係的な観点で、すべての事物を見て、事物と事物の間、事物内部の各部分、各段階の間は、相互に結びつき、相互的な影響があることを認めることである。中医学の整体観念は、人が生きていることを「全体的に」捉え、生命の営みを緻密に診ている。そこで古代の自然哲学から得られた知見と総合し、理性的なレベルへ引き上げ、「天人一体」、「形神一体」、「心身一体」などの観念を形成した。同時に、医学研究と応用に合わせ、古人はこの整体観念を中医学の基本概念と理論様式のように融合した。その内容は、人と自然の関係、臓器同士の結びつき、心と身体との関連などであった。これは、中医理論の基本学術の内包であり、臨床診断と治療の原則になるものである。
つまり、整体の角度から生命の規律を把握することは、主に「天人相応」の思想を通じて果たす。「天人相応」には、三つの方面が含まれる、即ち、人と自然事物の統一、人と自然規律の統一、人と自然構造の統一である。
③変化の角度から生命の規律を把握する
運動と変動は事物に存在する本質であり、生命の固有的な特徴でもある。古人は、生命が時間の流れ去るに従って絶えずに変化するという事実を観察できた。しかし、生命の補助変数が非常に複雑であり、運動によって発生した変量はいっそう把握し難い。そのため、中医学はその形成の初期に、整体観察と総合研究によって、中医学の変化の角度から生命の規律を把握する特有な学術特徴とその動態的な理論論述を形成した。その結論は粗忽であるが、生命の自然と真実を反映したのである。
まずは、医学概念に時間の内包がある。次に、医学理論の中、生命運動変化の原理を明確に論述した。また、弁証論治は中医の診断と治療の動態観の表しである。所謂「天時に逆らうなかれ」という理論の基はこれである。なお、一つの疾病の違う段階に異なる証になり、施治の方法や薬の遣いを随時変換することも、中医理論の動態化の顕著てきな特徴である。
つまり、変化の角度から生命の規律を把握することは、人の生理や病理現象、疾病の状態及び弁証論治が常に変動していることを認識と理解することである。
(李)