素問・陰陽応象大論篇 第五⑨
【原文】故曰:天地者,萬物之上下也。陰陽者,血気之男女也①。左右者,陰陽之道路也②。水火者,陰陽之徴兆也。陰陽者,萬物之能始也③。
故曰:陰在内,陽之守也。陽在外,陰之使也④。
【注釈】①陰陽者,血気之男女也:張志聡の注釈は、「陰陽の道は、人と言えば男女で、身体と言えば気血のことだ」である。ここの「之」は「と」の意味である。
②左右者,陰陽之道路也:古代の渾天説によれば、天体が東から西へ回転し、右旋と称する。天体が左から右へ回転するから、昼夜四時がある。『素問集注・巻二』の注釈には、「天地六合には、東南は左、西北は右である。陰陽の二気も上下と左右を昼夜に循環している。故に左右は陰陽の道路だ」と言った。なお、『類経・蔵象類・五』には、「陽は左で昇る、陰は右で降りる」と言った。
③陰陽者,萬物之能始也:「能始」とは、元始、本元の意味である。陰陽があってから、萬物が生まれる。故に、陰陽は萬物の本元だという。
④陰在内,陽之守也。陽在外,陰之使也:「守」とは、守備することである。「使」とは、使役のことである。『素問呉注・巻二』の注釈には、「陰は静であり、中にあって、陽を守備する;陽は動であり、陰が外への使役になる。陰陽は内外で連結し、分離することができない。」この言葉は陰陽の互根互用の道理の説明である。『類経・蔵象類・五』には、「守者は中で守る、使者は外で動く。法相で見ると、地が中で守り、天が外で動く……気血でいうと、営が中で守り、衛が外で動く」と言った。また、『素問・生気通天論』には、「陰者、蔵精で起亟也;陽者、衛外で爲固也。」といっている(「起亟」とは、精気をしばしば提供すること;「爲固」とは、肌湊を緻密にすること)。
【説明】
本節は、五方五時の所生所属は陰陽の変化に密接な関連があることを強調した。なお、陰陽に含まれた意味がとても広いことをはっきり述べた。例えば、天と地、上と下、血と気、男と女、左と右、水と火等がみんな陰陽で概括できる。さらに両者の関係は相互依存、相互使用という密接な関係である。
「陰在内,陽之守也。陽在外,陰之使也」という論述は、陰陽両方の相互依存、相互用いるという関係を説明しただけではなく、人体の生命活動の規律を概括したのである。複雑な生命活動でも、物質と機能との対立統一にしかすぎない。この陰陽に対しての高い概括は、病理の分析や臨床実践に重要な指導的な意義がある。
(李)