素問・陰陽応象大論篇 第五⑪
【原文】帝曰:調此二者①奈何?岐伯曰:能知七損八益②,則二者可調。不知用此,則早衰之節③也。
年四十,而陰気自半也,起居衰矣④;年五十,體重,耳目不聰明矣⑤;年六十,陰痿,気大衰,九竅不利,下虚上実,涕泣倶出矣⑥。
【注釈】①二者:前の文を受けて、陰陽偏勝のこと。
②七損八益:歴代の注釈はさまざまである。近年、長沙馬王堆に出土された竹簡の『養生方・天下至道談』の記載によって、明らかになった。「七損八益」は古代の房中の養生朮である。房中養生朮中にある八種の人体の精気に良い方法に従えば、人体の精気が充実し、耳目が聡明し、身体が強くて健康である;もし、房中養生朮中にある七種の人体の精気に悪い方法をすると、陰陽二気の協調ができず、精気が耗損され、早く衰老する。
③不知用此,則早衰之節:用とは、運用。節とは、次第に。上分の続きで、「七損八益」を知ると運用することで、運用しない場合は、陰陽不調になり、次第に早衰となる。
④年四十,而陰気自半也,起居衰矣:『素問集注・巻二』の注釈には、陰気は腎の精気を指すと認識してある。半とは、男子の生長発育過程の半分を指す。男子は八を一段階で、四十歳は(たいてい)生涯の半分である。陰気は腎の精気であり、歳が半分過ぎると陰気も半分なくなる。勿論、平素の生活状態も衰える。
⑤年五十,體重,耳目不聰明矣:『素問集注・巻二』の注釈にはこう言った、「経曰:腎虚、肝虚、脾虚、皆令人体重煩冤(身体の動きが軽便でなくなる)。又、年が五十歳になると、精液や血液皆虚になる。精気虚は上に上がれなくなり、耳と目が聰明でなくなる(視覚と聴覚が悪くなること)。」
⑥下虚上実,涕泣倶出:下虚とは、下焦の陽気不足のこと;上実とは、上部の陰実(陰盛)のことで、陽虚で陰水の化生ができなくなり、故に涕泣倶出(鼻水と涙がでる)。『内経知要』には「陽衰不能摂」と言った。
【説明】本節(今回と次回の分)は、上文に続いて、陰陽調理の「道」を説明した。
(李)