素問・金匱真言論篇第四⑤
【原文】故曰:陰中有陰、陽中有陽。平旦①至日中、天之陽、陽中之陽也;日中至黄昏②、天之陽、陽中之陰也;合夜③至鷄鳴④、天之陰、陰中之陰也;鷄鳴至平旦、天之陰、陰中之陽也。故人亦應之⑤。
夫言人之陰陽、則外爲陽、内爲陰⑥;言人身之陰陽、則背爲陽、腹爲陰⑦;言人身之藏府中陰陽、則藏者爲陰、府者爲陽⑧,肝心脾肺腎五藏皆爲陰、胆胃大腸小腸膀胱三焦六府皆爲陽。所以欲知陰中之陰、陽中之陽者何也?爲冬病在陰、夏病在陽⑨;春病在陰、秋病在陽⑩。皆視其所在、爲施鍼石也⑪。故背爲陽、陽中之陽、心也;背爲陽、陽中之陰、肺也;腹爲陰、陰中之陰、腎也;腹爲陰、陰中之陽、肝也;腹爲陰、陰中之至陰、脾也。此皆陰陽表裏、内外雌雄、相輸應⑫也、故以應天之陰陽⑬也。
【注釈】①平旦:日の出る時です。「旦」とは、明のこと。「日」が「一」の上にある、「一」は地平線です。
②黄昏:日が沈む時です。
③合夜:「合」は「台」の誤り、「始」の意味です。「合夜」とは、夜の始め、黄昏のことです。
④鷄鳴:深夜を指します。
下記の昼夜陰陽見取り図は教科書からスキャンしたもので、少し見づらいですが、「陰中有陰、陽中有陽」について分かりやすく説明してあります。
⑤故人亦應之:故に、人体(の陰陽)も天体(の陰陽)に相応する。下文はその具体的な記載です。
⑥外爲陽、内爲陰:「外」は体表で、「内」は内臓を指します。外は表で陽に属し、内は裏で陰に属します。
⑦背爲陽、腹爲陰:人体の前後を陰陽に分けると、背側は陽で、腹側は陰になります。
⑧藏者爲陰、府者爲陽:五臓は裏にあって、精気を蔵して瀉しない、故に陰に属します;六腑は表であり、化生に物を伝送して、蔵しない、故に陽に属します。
⑨冬病在陰、夏病在陽:冬病は腎にあり、腎は陰の中の陰であるので、故に「冬病在陰」と言います;夏病は心にあり、心は陽の中の陽であるので、故に「夏病在陽」と言います。
⑩春病在陰、秋病在陽:春病は肝にあり、肝は陰の中の陽であるので、故に「春病在陰」と言います;秋病は肺にあり、肺は陽の中の陰であるので、故に「秋病在陽」と言います。
⑪皆視其所在、爲施鍼石也:「其」は「病」です。病の所在を視て、(その臓腑と経絡を選んで)鍼灸を施術します。
⑫陰陽表裏、内外雌雄、相輸應:雄性は陽で、雌性は陰です。ここは臓腑を指し、臓は陰で雌であり、腑は陽で雄です。「輸應」とは、転送と相応の意味で、相互収受のことです。
⑬應天之陰陽:⑤と同じで、上文のまとめです。
【説明】
この節は、人の陰陽が天の陰陽に応じ、つまり「天人相応」という理論を使い、具体的に人体の形体構造の陰陽属性を分析した。これは、陰陽学説が人体に応用する最も基本的な内容となります。
本文の分析では、人体が陰陽に分けることができるのを説明しただけではなく、その相対性も指摘した。特に五臓の陰陽属性の帰属は、五臓の生理と病理、及び弁証などに重要な意義を持つことが判りました。
(李)