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『黄帝内経』筆記 蔵象学説(二十五)
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霊枢・海論第三十三④
【説明】本節(前回と前々回の分)は、四海の機能特徴とその上下腧穴の部位を紹介した。これは、『内経』の「人と天地相参」の整体観念を体現しただけではなく、上下各腧穴の部位を確定したため、胃・衝脈・膻中・脳の疾患の針灸治療に理論的依拠を提供した。
なお、身体に四海の命名をした理由は二つあり、その一はこの四者が水穀・血・気・髄の集まる場所である、その二はそれぞれが身体の生命活動の中に重要な地位を占めている。『内経』の中に多くの場合は、胃・衝脈・膻中・脳を臓腑や経脈に帰属して論述していますが、「四海」という本篇を作ったのは、それぞれの重要性を物語っています。下記に纏めておきましょう。
胃:『素問・五臓別論』に「水穀は口から入り、胃に蔵され、五臓の気を養う」、「胃その者は、六腑の大源である」;『素問・経脈別論』に「飲食ものが胃に入ると、精気が溢れる」、「食気が胃に入り、肝に散精し……濁気が心に帰る」などの記載があり、皆、胃の機能は水穀を受納し、精微を化生して五臓六腑を滋養すると指摘しています。概括すると、人体の精気津液血脈など皆水穀の精気から化生したものだと言えます。これらは「胃が命の根本所在である」を示しています。所謂「平人の常気は胃から受け継ぐものである」。だから、胃が「水穀の海」というのです。
衝脈:衝脈は奇経の一つです。其の脈は先天の本と言われる腎経と互いに並行し、注ぎ合う。一方、後天之本という胃経にも互いに合っている。腎と胃は精血が所生と所蔵する臓であるから、衝脈には多く蔵血している。なお、衝脈の循行と分布は広いので、所蔵される血液を五臓六腑と陰陽諸経に注いでいます。故に、衝脈を「血の海」と称します。
膻中:ここの膻中とは、胸中のことです。『類経・経絡類・三十二』に「膻中は、胸中であり、肺が居る所である。諸気が皆肺に属し、真気または宗気という。宗気は胸中に積み集まり、咽喉から出る。心脈を貫通するや呼吸を行うなどに働くから、故に膻中を気の海と称する」;『霊枢・五味』に「穀が始めに胃に入り、その精微は先に胃の両焦から出て、五臓を滋養する。別途に営衛という二行もあるが、その大気が何処にも行かなく胸中に積み集まり、気海と命じる。肺から咽喉に沿って出るが、呼吸に務め、呼の時に出て吸の時に入る」という記載がありました。これらは、宗気が臓腑と全身の肢体運動や呼吸、言語活動などの機能活動を推動する大きなチカラであることを説明しました。宗気が人体の生命に係わり、胸中に積み集まっているものだから、膻中を「気の海」と称した訳です。
脳:頭部に蔵され、精と髄が集まる処です。『素問・五臓生成篇』に「諸髄は、皆脳に属す」、『素問・脈要精微論』に「五臓は、身を強くするもの;頭は精明の府である」というが記載あります。脳は精明を主り、五臓機能の強さの表しであることを示しました。『内経』には脳の機能に関する論述は多くないが、『素問・五臓別論』に奇恒之腑に列すると本篇に「四海」(髄海)に列するから見ると、脳が身体の中での重要性を十分に重視していることが分かります。
(李)
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