霊枢・海論第三十三⑤
【原文】黄帝曰:凡此四海者、何利何害?何生何敗①?岐伯曰:得順者生、得逆者敗;知調者利、不知調者害②。
黄帝曰:四海之逆順奈何③?岐伯曰:気海有余者、気滿胸中、悗息面赤;気海不足、則気少不足以言④。血海有余、則常想其身大、怫然不知其所病;血海不足、亦常想其身小、狹然不知其所病⑤。水穀之海有余、則腹滿;水穀之海不足、則飢不受穀食⑥。髓海有余、則輕勁多力、自過其度⑦;髓海不足、則脳轉耳鳴、脛痿眩冒、目無所見、懈怠安臥⑧。
黄帝曰:余已聞逆順、調之奈何?岐伯曰:審守其輸、而調其虚実、無犯其害⑨。順者得復、逆者必敗⑩。黄帝曰:善。
【注釈】①凡此四海者、何利何害?何生何敗:四海は人体にどのような利害関係しているか。どのように生命活動を促進或は損害しているか。
②得順者生、得逆者敗;知調者利、不知調者害:『類経・経絡類・三十二』の解説は、ここの「順」は調養が適当である、「逆」は調養が不適当であることを指します。『霊枢集注・巻四』には、この「順」と「逆」は四海の機能活動であると注釈しています。要するに、四海の機能が正常であれば、生命力は旺盛である;四海の機能が失常であれば、生命力は弱くなる。なお、四海を適当に調養すれば、健康につながる;四海を適当に調養しなければ、身体に害を与える。
③四海之逆順奈何:四海はどんな正常と異常な情況があるか。
④気海有余者、気滿胸中、悗息面赤;気海不足、則気少不足以言:「悗息」は、胸悶喘促の意味で、気海実邪の主症状の一つです。気海に邪気が余る場合、胸悶、呼吸が速い、顔色が赤いなど実熱の症状が見られる;気海の正気が不足の場合、気が少なく話声が無力になります。
⑤血海有余、則常想其身大、怫然不知其所病;血海不足、亦常想其身小、狹然不知其所病:「怫然」とは、重たく腫れるような感じ、「狹然」とは、狭いような感じです。血海に邪気が余る場合、身体に膨大感を覚え、体がぶくぶく太っていて、不愉快を感じるがどんな病気であるかが分からない;血海の正気が不足の場合、身体が小さく感じるがどんな病気であるかが分からない。
⑥水穀之海有余、則腹滿;水穀之海不足、則飢不受穀食:水穀の海に邪気が余る場合、腹部の膨満が見られる;水穀の海の正気が不足の場合、飢餓を感じるが、食べたがらないという症状が見られる。これは、胃病の虚実弁証の根拠となっています。
⑦髓海有余、則輕勁多力、自過其度;二種類の注釈があります。其の一は、『類経・経絡類・三十二』に記載したよう、「髓海有余」は健康状態であり、身体が軽くて力があるから、自分なりに過ごしている。その二は、『霊枢注証発微・巻四』の注釈のよう、髓海の実証であることを認識しています。髄海に邪気が偏勝の者(例えば、躁鬱病の患者)は、高い処に登ったり、疾走したりなどの症状が見られる、病気でない時より力が大きいから、「自過其度」(いつもの自分と違う)という表現も見られる。
⑧髓海不足、則脳轉耳鳴、脛痿眩冒、目無所見、懈怠安臥:髓海の正気が不足の場合、めまい、耳鳴り、足が酸軟無力、視力減退、全身の無気力でいつも横になり、動きたくないなどの症状が見られる。
⑨審守其輸、而調其虚実、無犯其害:四海の上下腧穴を確実に把握し、その虚実(有余と不足)に従って、補するべき場合は補し、瀉するべき場合は瀉して、その虚実を調整する。この治療原則を反してはいけない。
⑩順者得復、逆者必敗:治療原則に従って治療すれば、身体の回復ができる;原則を逆らう場合は、失敗するのは当然である。
【説明】
本節は、概括的に四海の虚実証候及び調理と治療の原則を論じました。
『霊枢・海論』の勉強は今日で終わり、次回からは、『霊枢・本輸』を勉強しましょう。
(李)