霊枢・本輸第二⑧
五輸穴の臨床応用法その3を紹介します。
3、本経五輸取穴法:『霊枢・一日を四時に分ける』には、五輸で五変を治療する綱領を決められました。これで五輸穴が治療の際それぞれ特殊な作用があると伺えます。
①井穴:「病在臓者取之井」。例えば、中風の閉証は肝陽が暴騰し気血が急に上昇して、痰を挟んで心竅を蒙閉した結果です。この場合は、十二井穴を点刺して血を出すと同時に督脉の水溝を瀉して
開閉泄熱します。井穴は、突然の意識障害の救急に顕著的効果があります。
②滎穴:「病変于色者取之滎」。「病変于色」とは、一部の疾患の初期に、邪気が体表経絡に在るというふうに理解します。臨床では、風熱襲表で肺気失宣による咳、咽喉の痛み、口渇などの症状に、手太陰の滎穴(魚際)と手陽明の滎穴(二間)を針刺し、
瀉肺熱と利咽止痛の効果を求められます。なお、温病治療の早期記録にも「滎主身熱」という記載があります。また、『霊枢・五邪』にも「邪が肝に在り、則ち両脇が痛い……行間(肝経の滎穴)を取り、以引脇下」という記載がありました。臨床では、肋間神経痛の場合は、行間を針刺で
鎮痛の効果があります。
③輸穴:「病時間時甚者取之兪」。「時間時甚」とは、陣発性・断続的という意味です。『難経・六十八難』に「兪主体重節痛」と記載があり、臨床では、輸穴を用いて陣発性疼痛と断続性発熱の治療に有効です。例えば、リューマチ性関節炎の針灸治療に、上肢の場合は太淵・大陵などを選び、下肢の場合は太溪・太衝などを選びます。なお、断続性の寒熱に手太陽の後渓・足厥陰の太衝を使うのも『霊枢』に記載された原則と一致しています。
④経穴:「病在于首者取之経」。例えば、『鍼灸大成』に脾経の経穴(商丘)を針刺で舌体の強痛を治療するのはその一例です。足太陰の脾経の脈が舌体に繋いで舌の下に散在しています。
⑤合穴:「経満而血者病在胃、飲食不節得病者、取之于合」。臨床では、足太陰経の合穴(陰陵泉)を針刺で排尿を促進します。なお、手陽明経の合穴(曲池)、足陽明経の合穴(足三里)を針刺で消化・呼吸と新陳代謝を促進する作用があります。各経の合穴は内臓の生理機能を調整特殊な作用があると伺えます。
(李)