霊枢・邪客第七十一⑧
【原文】黄帝問於岐伯曰:人有八虚、各何以候①?岐伯答曰:以候五藏②、黄帝曰:候之奈何?岐伯曰:肺心有邪、其気留于兩肘③;肝有邪、其気流于兩腋;脾有邪、其気留于兩髀;腎有邪、其気留于兩膕④。凡此八虚者、皆機関之室、眞気之所過、血絡之所遊、邪気悪血、固不得住留⑤、住留則傷経絡骨節、機関不得屈伸、故病攣也⑥。
【注釈】①人有八虚、各何以候:人に八虚がある、それぞれどういう疾病の診断ができる?「虚」とは、「谿」のことで隙間の意味です。「八虚」とは、四肢にある大関節(両側のわきの下、ひじの内側、腿のつけね、ひざの裏側)の窪んだところを指します。
②以候五藏:五臓の病変を診断できる。
③肺心有邪、其気留于兩肘:肺と心に邪があると、その邪気は兩肘に溜まる。
④肝有邪、其気流于兩腋;脾有邪、其気留于兩髀;腎有邪、其気留于兩膕:肝に邪があると、その邪気は兩脇に溜まる;脾に邪があると、その邪気は兩髀に溜まる;腎に邪があると、その邪気は兩膕にたまる。
⑤凡此八虚者、皆機関之室、眞気之所過、血絡之所遊、邪気悪血、固不得住留:これらの「八虚」は関節の屈伸の機関で、真気と結絡が通過する要塞である。邪気と悪血(瘀血など)をここで停留させてはいけない。
⑥住留則傷経絡骨節、機関不得屈伸、故病攣也:(邪気と悪血)が停留したら、経絡と骨節が損傷され、関節が屈伸不利(不自由)になり、故に痙攣などの病証が発生する。
【説明】
本節は四肢の八谿と五臓との相互関係を討論した。臨床の弁証論治に重要な意義があります。例えば、心肺の病症に肩と肘の痛みが見られる、肝の病症に脇の脹痛が見られる、脾の病症に下肢の困重感が伴う、腎の病症に腰膝の痠痛が見られる。これは、臨床治療にも指導的意義がある。例えば、肢体の疾患に、その病変の部位によって相応する帰経薬を選ぶことができる。例えば、肩と肘の痛みに肺経に帰経する桑枝、心経に帰経する桂枝を選ぶ、脇下或は脇部脹痛に肝経に帰経する柴胡、郁金を選ぶ、髀(両足のつけね)の重痛に脾経に帰経する薏苡仁を選ぶ、膝とその裏の痛みに腎経に帰経する牛膝を選ぶのはよいです。
本篇の中心となる思想は主に人と外部環境は対立統一している整体であることです。外邪が人体に入ると臓腑気血の乱れが起こり、疾病が発生する。なお、失眠を例にして、半夏湯を挙げて「調其虚実、以通其道、而去其邪」は邪気による疾病を治療する原則であることを説明した。これは、現在にでも指導的な意義があります。
また、営衛の気、宗気が経脈の内外で運行しているが、邪気が侵入したら、先ず身体の正気の強弱と邪気の盛衰を弁別してから、「持針縱舍」して、正確に治療を行うことを説明した。
最後に、人体は有機的な整体であり、肢体と臓腑は関連があることを説明した。邪気が入ると、八虚と五臓に関連する病証が発生することがある。
では、次回からは、『霊枢・本神』を勉強しましょう。
(李)