霊枢・本神第八⑥
【原文】肝藏血、血舍魂、肝気虚則恐、実則怒①。脾藏営、営舍意、脾気虚則四肢不用、五藏不安、実則腹脹、経溲不利②。心藏脈、脈舍神、心気虚則悲、実則笑不休③。肺藏気、気舍魄、肺気虚則鼻塞不利、少気、実則喘喝、胸盈仰息④。腎藏精、精舍志、腎気虚則厥、実則脹、五藏不安⑤。必審五藏之病形、以知其気之虚実、謹而調之也⑥。
【注釈】①肝藏血、血舍魂、肝気虚則恐、実則怒:肝臓は蔵血を主り、血は魂の宿である。肝気虚なら恐懼しやすい、肝気実なら怒りやすい。
②脾藏営、営舍意、脾気虚則四肢不用、五藏不安、実則腹脹、経溲不利:脾臓は蔵営を主り、営は意の宿である。脾気虚なら四肢の運動が弱まり、五臓に営養不足で機能低下になる。脾気実なら腹脹や二便の不利が発生する。
③心藏脈、脈舍神、心気虚則悲、実則笑不休:心臓は蔵脈を主り、脈は神の宿である。心気虚なら悲しみやすい。心気実なら笑いが止まらない。
④肺藏気、気舍魄、肺気虚則鼻塞不利、少気、実則喘喝、胸盈仰息:肺臓は蔵気を主り、気は魄の宿である。肺気虚なら鼻づまり、気短が発生する。肺気実なら喘促して、胸中に脹満し顔を仰向けにして呼吸する。
⑤腎藏精、精舍志、腎気虚則厥、実則脹、五藏不安:腎臓は蔵精を主り、精は志の宿である。腎気虚なら四肢が厥冷。腎気実なら少腹が脹満し五臓が安定できず。
⑥必審五藏之病形、以知其気之虚実、謹而調之也:五臓に病変が発生したら、必ずその病情を審査し、その病証が虚に属すか、実に属すかを明確し、そのあと慎重に治療するべきである。
【説明】
本節は、「心蔵神、肺蔵魄、脾蔵意、肝蔵魂、腎蔵志」所謂「五神臓」(神志活動は五臓に帰属している)の理論を示し、『内経』の五臓を中心にした生理病理機能活動の理論体系を反映した。なお、本節は五臓の虚実証候の「五臓弁証」の綱領を論述し、治療に重要な依拠を提供した。
特に重視するべきところは、「脾実則腹脹、経溲不利(脾気実なら腹脹や二便不利が発生する)」、と「腎実則脹、五藏不安(腎気実なら少腹が脹満し五臓が安定できず)」である。『素問・調経論』に「志有余則腹脹飧泄(そんせつ)」という記載もあり、腹脹、二便の不利、五臓不安などは脾腎両臓の共通症状であることを説明してある。これらは、先天の本である腎と後天の本である脾が整体的生命機能への影響がとても大きいであることを反映している。「腹脹、二便不利」は気機壅滞の反映であり、気機不暢なら諸病が治り難い。五臓の病は互いに影響し合うが、其の中、脾腎は最もかぎとなる臓である。なお、「腹脹、二便不利」は脾腎と密接な関係がある他に五臓の神気の虚実も反映する。故に、臨床では、二便の変化を観察することで、病情の診断に広い意義がある。
本篇の内容を纏めると、生命の起源、神の概念、分類、神と五臓の関係及びその生理と病理を論述した。生命の起源について、「天之在我者徳也、地之在我者気也、徳流気薄而生者也。故生之來謂之精」と論述した。神、魂、魄、意、志、思、慮、智など精神意識活動はみんな五臓の精気により化生され、心が全面的に管理し、なお五臓に分属する、これらは後世の「五神臓」理論の根源である。また、各種の神識活動を概括した。神志活動が過激或は長く持続することは五臓へ病変を引き起こす同時に精神情志異常もなる。なお、五臓の虚実証候のそれぞれの特徴も論じた。治療の際、「察觀病人之態、以知精神魂魄之存亡、得失之意」、「凡刺之法、必先本于神」などの治療原則を強調した。
では、次回からは『霊枢・本蔵第四十七』の一部分を勉強しましょう。
(李)