霊枢・百病始生第六十六⑦
【原文】黄帝曰:積之始生、至其已成、奈何①?岐伯曰:積之始生、得寒乃生、厥乃成積也②。黄帝曰:其成積奈何?岐伯曰:厥気生足悗、悗生脛寒、脛寒則血脈凝澀、血脈凝澀、則寒気上入于腸胃③;入於腸胃、則 * 脹、*(月へんに真)脹則腸外之汁沫迫聚不得散、日以成積④。卒然多食飮則腸滿、起居不節、用力過度則絡脈傷、陽絡傷則血外溢、血外溢則衄血;陰絡傷則血内溢、血内溢則後血⑤。腸胃之絡傷、則血溢於腸外、腸外有寒、汁沫與血相搏、則并合凝聚不得散、而積成矣⑥。卒然外中於寒、若内傷於憂怒、則気上逆、気上逆則六輸不通、温気不行、凝結蘊裹而不散、津液澀滲、著而不去、而積皆成矣⑦。
【注釈】①積之始生、至其已成、奈何?:積病の発生し始めから形成するまでの病理過程は何?
②積之始生、得寒乃生、厥乃成積也:積病の発生は、寒邪を受けたためである。寒邪が逆上すると積となる。
③厥気生足悗、悗生脛寒、脛寒則血脈凝澀、血脈凝澀、則寒気上入于腸胃:厥逆の気による病症では、最初は足の疼痛不利が発生する、足の疼痛からふくらはぎが冷える、足脛部の寒涼で血脈が凝澀する、血脈の凝澀不通で寒気が腸胃まで上がる。
④入於腸胃、則 *(月へんに真)脹、*脹則腸外之汁沫迫聚不得散、日以成積:腸胃が寒気を受けると脹満する、脹満では胃腸の回りにある津液が溜って消散できなくなり、日日が経つと積になる。
⑤卒然多食飮則腸滿、起居不節、用力過度則絡脈傷、陽絡傷則血外溢、血外溢則衄血;陰絡傷則血内溢、血内溢則後血:突然の暴飲暴食で腸胃が充満する、または、無規律な生活や力使い過ぎで絡脈が損傷される、陽絡が損傷されると血液が外溢し衄血が発生する;陰絡が損傷されると血液が内溢し、便血が発生する。「陽絡」と「陰絡」について、『霊枢集注・巻八』は「上行の絡脈は陽絡、下行の絡脈は陰絡である」と注釈している。臨床では、陽絡は体の上部又は表にある絡脈で、陰絡は体の下部又は裏にある絡脈であると認識している。
⑥腸胃之絡傷、則血溢於腸外、腸外有寒、汁沫與血相搏、則并合凝聚不得散、而積成矣:腸外の絡が損傷すると、血液が腸外に漏れる、もし腸外に寒があったら、腸外の津液と血液が混合して消散できず、積になる。「腸胃」は「腸外」の誤りである。
⑦卒然外中於寒、若内傷於憂怒、則気上逆、気上逆則六輸不通、温気不行、凝結蘊裹而不散、津液澀滲、著而不去、而積皆成矣:突然外感寒邪の同時に憂怒の情緒に内傷されると、気機が上逆する、気機が上逆すると六経の気血が運行不暢になる、陽気の温煦作用が失い、血液が凝結し経絡に蘊結して消散できず、津液も乾澀し組織に浸透しない、局部に溜まり、積になる。「六輸」は三陰と三陽の輸穴を指す。「温気」とは「陽気」のことである。
【説明】
本節は「積」の病因病機を論述している。積を形成する原因が多い、例えば、外感寒邪、飲食の不節制、労力過度、生活リズムの乱れ、七情の失調などがある。積が形成する病機は大きく寒凝、気滞、血瘀、津停の四つであり、且つ四者は相互影響し合う。特に気滞、血瘀、津停は互いに因果関係となっている。この四つの素因を把握していれば、弁証と施治の方向が違いない。
積の形成は慢性的な過程である。一旦形成したら、頑固で治癒し難い。治療の際、体質が強い或は初期段階の場合は、活血化瘀、行気消積を主として、化痰養血を兼ねる;体質が弱い或は後期段階の場合は、養血活血を主として、攻補兼施をする。これらに関連する論述は、王清任氏の『医林改錯』と唐容川氏の『血証論』に多くあり、方剤も挙げてあるので、積病の治療に新しい道を開拓してくれた。
(李)