人気ブログランキング | 話題のタグを見る

日本中医学院ブログ


『黄帝内経』筆記 病因病機学説(三十三)

素問・至真要大論篇第七十四(選び出す)④

【説明】本段は、標本中気の従化及び疾病との相反関係を述べている。「標本中気」は運気学説の内容の一つで、注釈①に説明したように「標」は三陰三陽(少陽・太陽・陽明・少陰・太陰・厥陰)を指し、「本」は六気(風・寒・暑・湿・燥・火)を指す。そこで、本の下、標の上にあって、標本と表裏関係を持つ気を「中気」とされる。標本の気はそれぞれ陰陽寒熱の性質を持つ。人は行き交う天地の気の中に存在している、そして天地の気が四方八方に動き千変万化しているから、人と自然界と間に密接な関係が形成する。通常では、人体は天地四時陰陽の変化に適応し、発病しない。だが、天地に非常な変化があったら、邪気を受けて発病する可能性がある。六気に標本があるため、その従化関係も幾つがある:本に従う、標本に従う、標本に従わない、標本に従わなく中気に従う等々ある。下記は例である:
  本に従う病証:
①少陽:本は火、標は陽、中気は厥陰(風木)である。口苦、頭痛、耳聾(難聴)、眩暈などの症状は、火の本気から生じたものである。
②太陰:本は湿、標は陰、中気は陽明(燥金)である。腹脹泄瀉、浮腫などの症状は、湿の本気から生じたものである。
上記の①②とも標と本が同気に属するから、(症状を)「従本化」とする、中気も本気に従うとなる。

本と標に従う病証:
③太陽:本は寒、標は陽、中気は少陰(君火)である。
④少陰:本は熱、標は陰、中気は太陽(寒水)である。
上記の③④は標と本が異なる気に属するから、症状は「従本化寒(熱)」と「従標化熱(寒)」両方みられる。故に太陽と少陰の傷寒はどちらも寒化証と熱化証がある。

中気に従う病証:
⑤陽明:本は燥、標は陽、中気は太陰(湿土)である。陽明は陽の極めであり、「陽極則ち陰が生まれる」、故に、燥より湿の症状が現れてくる。
⑥厥陰:本は風、標は陰、中気は少陽(相火)である。厥陰は陰の極めであり、「陰極則ち陽が生まれる」、故に、木より火の症状が現れてくる。
上記の⑤⑥の病証は標にも本にも従わず、中気の太陰又は少陽に従う。

なお、六気の変化には、勝、復、太過及び不及などがある。故に、六淫より引き起こす病証も、本によるもの、標によるもの、中気によるものなどがある。

要するに、標本中気と陰陽六気の理論は人体(形)が自然界(気)への感応規律を説明し、疾病の病因病機に対する認識や、治療法への導きとなる。

標本中気逆従の治法に関して、次のように説明している:病が本によるものは、その本を治療する;病が標によるものは、その標を治療する;病が中気によるものは、その中気を治療する;病が本と標によるものは、標本兼治する。所謂「逆従治則」は、逆治法と従治法が含まれる。逆治法とは、寒を以て熱を治す、熱を以て寒を治すなどがある、それは薬性が疾病の徴候が逆であるから「逆治法」と言う、これを「正治法」とも称する。一方、従治法とは、寒を以て寒を治す、熱を以て熱を治すなどがある、それは薬性が疾病の一部の徴候(仮相)が同じであるから「従治法」と言う、これを「反治法」とも称する。「従治法」は真寒假熱や真熱假寒など複雑な病証の治療に使われる。

本段は、六気が勝の時の脈象変化(例)もあげている。一年中六気の変化は当然人体の臓腑気血を影響する。六気が勝(主気)の時が三陰三陽に反映する脈象は次の通り:厥陰の気は風木で、臓は肝であるから、其の脈は弦である;少陰の気は君火で、臓は心であるから、其の脈が鈎となるなどなど。これらは疾病の診断や予後の判断の参考となる。なお、「脈至而従、按之不鼓、諸陽皆然。諸陰脈至而従、按之鼓甚而盛也」との説は、脈と証が一致しない「真寒假熱証」と「真熱仮寒証」の診断に理論的依拠を提供している。



(李)
by jbucm | 2016-12-05 09:53 | 中医学

<< 宮廷謀殺案と附子      孫思邈与蘆照鄰 >>

日本中医学院が運営するブログです
by jbucm
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31
カテゴリ
以前の記事
2024年 06月
2024年 04月
2024年 01月
2023年 12月
2023年 06月
2023年 04月
2022年 12月
2022年 06月
2022年 04月
2022年 02月
2021年 12月
2021年 11月
2021年 06月
2021年 04月
2021年 01月
2020年 12月
2020年 11月
2020年 08月
2020年 02月
2019年 12月
2019年 11月
2019年 08月
2019年 05月
2019年 04月
2019年 03月
2018年 12月
2018年 11月
2018年 08月
2018年 07月
2018年 06月
2017年 12月
2017年 11月
2017年 09月
2017年 08月
2017年 07月
2017年 06月
2017年 05月
2017年 04月
2017年 03月
2017年 02月
2017年 01月
2016年 12月
2016年 11月
2016年 10月
2016年 09月
2016年 08月
2016年 07月
2016年 06月
2016年 05月
2016年 04月
2016年 03月
2016年 02月
2016年 01月
2015年 12月
2015年 11月
2015年 10月
2015年 09月
2015年 08月
2015年 07月
2015年 06月
2015年 05月
2015年 04月
2015年 03月
2015年 02月
2015年 01月
2014年 12月
2014年 11月
2014年 10月
2014年 09月
2014年 08月
2014年 07月
2014年 06月
2014年 05月
2014年 04月
2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
お気に入りブログ
メモ帳
ライフログ
検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧