こんにちは、今日は、久しぶりに臓腑の話を致しましょう。今回からは、3~4回に渡って、脾と胃の病証を紹介したいと思います。
脾胃は中焦に位置し、経脈で相互に絡属しているので、脾と胃は相表裏とされます。脾は水穀の運化を主り、精微を輸布して蔵営(営養物質を蔵す)します。胃は受納を主り、水穀を腐熟するので、「水穀の海」と呼ばれます。脾気は昇、胃気は降で、燥湿相済し、共同で飲食物の消化、吸収と輸布を完成させ、気血生化の源となり、「後天の本」とも称されます。脾はまた主統血、主四肢、主筋肉の機能を持ちます。
他の臓腑と同じ、脾胃の病証も寒熱虚実があります。脾の病証は陽気虚衰、運化失調、水湿痰飲の内生、統血不能などの病理変化になります。胃の病証は主に受納、腐熟(消化)機能の異常によって、胃気上逆(いきじょうぎゃく)という病理変化です。
脾病には、腹脹腹痛、泄瀉便溏、浮腫、出血等が常見されます。胃病には、脘痛、嘔吐、曖気(あいき、おくび・ゲップのこと)、呃逆(しゃっくりのこと)等が常見されます。
では、脾の虚証から紹介いたしましょう:
脾気虚証:脾気虚証とは、脾気不足により、運化失常として表れる証候です。飲食の不摂生や過労によるか、他の急慢性疾患によって脾気を消耗されるのが原因です。
【臨床表現】:腹脹納少、食後脹甚、大便溏薄、肢体倦怠、少気懶言(無気力で話が少ない)、顔色萎黄或は晄白、体が痩せるか浮腫む、舌質が淡で苔白、脈緩弱等一連の証候が見られます。
【証因分析】:脾気虚では、運化機能が減退と気虚の症状同時に見られていることを診断の要点です。脾気不足で運化力が弱くなり、消化が遅緩し、水湿が内停され、その逆影響を受けで、脾気が動き難くなり、虚性の腹脹となります。また、脾気不足すると、胃気も弱くなり、故に食欲がなくなります。水湿がうまく運化されないため、腸に流され、大便が溏薄(下痢気味)となります。肢体倦怠、無気力、面色萎黄、舌質淡、脈弱等一連の証候は皆脾気虚弱の象です。顔色晄白及び浮腫がある場合は、脾失健運により水湿が膚に浸潤するためです。
脾陽虚証:脾陽虚証は、脾陽虚衰により、陰寒内盛として表れる虚寒の証候です。寒象が顕著であるので、脾虚寒証、脾胃虚寒証、中焦虚寒証なども呼ばれます。
【臨床表現】:腹脹納少、腹痛、温かくするや押されることを好む、畏冷、四肢不温(手足の冷え)、口淡不渇、大便溏薄(下痢の程度は脾気虚証より酷い)。或は肢体困重、全身浮腫、小便短少、或は帯下量が多く、質が薄い。舌質は淡胖、舌苔は白滑、脈は沈遅無力が見られます。
【証因分析】本証の多くは脾胃気虚が進んだもので、飲食失調、過食生冷或いは寒涼薬物による脾陽損傷、また腎陽不振によっても招致される証です。弁証要点は、脾失健運(脾の運化機能が失う)と全身の寒象です。
脾の働きは十分な陽気が必要で、脾虚気弱だと運化できないため、納少腹脹、大便溏薄となります。脾の虚寒の証では、腹部の隠痛、温運無力などがあって、水湿停聚し、故に小便短少で、水湿が肌膚に溢れるため、肢体浮腫で、下に注がれることから白帯量が多いわけです。口淡不渇及び舌、苔、脈等いずれも陽気虧虚、寒湿内停の象です。