こんにちは、李です。先週、「中気下陥証」と「脾不統血証」を紹介しました。この二証と「脾陽虚証」は皆「脾気虚証」のシリーズだと言っても良いでしょう。殆ど最初からの発症は「脾気虚証」で、人によって、直接脾陽虚証になるか、途中で「中気下陥証」か「脾不統血証」が現れる場合もあり、さまざまな結果になります。なので、「脾気虚証」の段階できちんと治せば、あとの証が出ないわけです。
さて、今日は、脾病に良く見られるもう二種類の証を紹介致しましょう。それは、「寒湿困脾証」と「湿熱蘊脾証」です。
寒湿困脾証:寒湿内盛、阻困中陽の証候であり、湿困脾陽、寒湿中阻とも呼ばれています。
【臨床表現】:脘腹部の脹悶、食欲がない、大便溏泄、吐き気、口淡不渇(口に味がしない、渇かない)、頭と全身が重たい。或は肢体の浮腫、小便短少、或は体や目が暗く黄色くなる。或は、女性に白帯の量が多く、舌体が淡胖、舌苔は白膩か白滑、脈は濡緩か沈細です。
【証因分析】:本証の多くは、冷たい飲物や冷たい食物を取りすぎたため、寒湿が中焦に停滞することです。或いは雨や、湿った所に長く居たため、寒湿が侵入したことです。或は甘い物や油っぽい物の食べ過ぎで、湿が内から生じ、内湿と外湿が互いに因果となることです。
「脾気弱れば、湿が内より生じ、湿盛んなれば脾健運せず」と言われていますので、ここから湿盛と脾虚の間には互いに因果関係のあることが分かります。寒湿内盛なので、脾陽が阻害され、運化はコントロールを失うので、脘腹脹悶、吐き気、大便溏泄などが見られます。湿邪が気機を阻害し、清陽を阻むので、頭と全身が重たい、或は体や目が暗い黄色くなります。湿が肌膚に溢れるので、浮腫となります。口淡、舌苔は滑、脈象は濡緩等いずれも寒湿内困によるものです。
湿熱蘊脾証:湿熱が中に蓄積され、脾の運化機能が障害する証候で、湿熱困脾、中焦湿熱、脾経湿熱とも呼ばれます。
【臨床表現】:脘腹痞悶、吐き気、肢体の重だるさ、大便溏泄ですっきりしない、口が渇くが飲みたがらない、身熱不揚(手で肌を押え、最初は熱く感じないが、暫くすると、熱く感じることです。つまり、身体の中に熱が篭っていることでしょう)、汗が出ても熱がとれない、或は肌や目が黄ばむ、或は皮膚のかゆみ、舌紅で苔は黄膩、脈は濡数です。
【証因分析】:本証の多くは湿熱の邪を受けるか、飲食の不摂生で脂肪や甘物、酒の過食により湿熱が釀成され、内蘊脾胃で脾の運化に障害を招いたことです。
湿熱の邪が脾胃に蘊結され、脾胃の受納運化が行われず、脾気と胃気の昇降異常となるので、脘腹痞悶、食欲不振となります。熱の勢いに迫るので、大便溏泄になる、湿邪は陰邪で気機を阻み、便がすっきりしない。脾は四肢筋肉を主る、湿邪が粘滞し、故に肢体の重だるさを感じる。湿熱互結なので、身熱不揚で汗が出ても熱がとれない。また、もし脾胃の湿熱が肝胆を熏蒸し、肝の疏泄機能が異常になり、胆液が外泄するので、肌や目が黄色く、皮膚が痒くなる。舌紅苔黄膩、脈濡数はともに湿熱内蘊の象です。
脾の病証について以上の6つを紹介しました。他にも色んな証ありますが、どうせこれらの証からの変化されるものなので、まずは、この6つの証の特徴を把握しましょう。
なお、脾は「湿を嫌う」という特徴があるのを36回目に紹介しました。今日の二証とも、湿邪による脾の運化機能が障害になる証です。共通症状がある一方、前者が寒の症状や多少脾陽虚の症状が見られ、後者は熱の症状が伴います。こちらが二者の主な区別です。